おやぢの部屋2
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2018年 07月 07日 ( 1 )
VASKS/Laudate Dominum
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Ilze Reine(Org)
Sigvards Kļava/
Latvian Radio Choir
Sinfonieetta Riga
ONDINE/ODE 1302-2


前回はフルート協奏曲と交響曲でヴァスクスの「毒気」にあてられてしまいましたが、今回は合唱でまた別の面からのヴァスクスを体験してみましょうか。これは、2007年に録音されたこちらのアルバムと同じ演奏家によって2017年に録音されたもので、その10年の間、正確には2011年から2016年までに作られた合唱曲が収録されています。
まずは、弦楽合奏と合唱で「Da pacem, Domine(主よ、平和をお与えください)」という、2016年のヴァスクスの生誕70周年の記念行事の一環として、このアルバムの演奏家によって初演されたラテン語のテキストによる曲が演奏されます。これは、18分近くもかかる長大な作品ですが、そんな長さは感じられない高い密度の作品です。というか、メインはとてもシンプルなテーマですが、それがまるで寄せては返す大波のように迫ってくるので、聴いている人はひたすらそれに身を任せているうちに、曲が終わっている、という、ほとんど媚薬のような不思議な力を持った音楽です。まるで、バーバーの「アダージョ」と「アニュス・デイ」を、オーケストラと合唱が同時に演奏しているみたいな高揚感が与えられるのではないでしょうか。
思いっきり盛り上がった後にいきなりゲネラル・パウゼが入るのも効果的。その後にはとても澄み切った世界がまた広がってくるのですから、たまりません。そして、最後にはなんと控えめなシュプレッヒ・ゲザンクまで。まさに、人を感動させるツボを熟知した、職人技の世界です。もちろん、その「感動」には、いくばくかの胡散臭さが混じっているのはこの手の音楽のお約束です。
2曲目も同じ年に作られた、こちらは15世紀のスイスの聖人のドイツ語のテキストによる「Mein Herr und mein Gott(わが主とわが神よ)」という、ちょっと短めの曲です。これは分厚いハーモニーが身上で、ほとんどロマン派の合唱作品と変わらない外観を持った音楽です。そのような昔の形をまとってはいても、そこからは現代人が求めている平安な世界が体験できる、まるでヴァーチャル・リアリティのような機能が作用しているのが、すごいところです。もしかしたら、心が折れている時などは、本気ですがりつきたくなるような、やはり怪しい魅力が満載です。
この中に登場する、合唱のロングトーンは、もろに心に突き刺さってくるかもしれません。そのバックの弦楽器が、ワーグナーそっくりの耽美さを奏でていることも、そんな効用とは無関係ではないはずです。
3曲目がアルバムタイトルにもなっている「Laudate Dominum(主を讃えたまえ)」という、オルガンと合唱のための作品です。これは、オルガンと合唱との呼び交わし(応唱)でしょうか。ニンニク臭はありませんが(それは「王将」)。まずはオルガンが華々しいソロを繰り広げると、その残響の中から合唱が始まるというとてもカッコいいやりとりが3回ほど繰り返されます。その間に合唱は延々と「Laudate Dominum」という言葉だけを繰り返します。これはあの、「Ave Maria」だけを執拗に繰り返すだけという伝カッチーニの名曲「アヴェ・マリア」と同質の盛り上がりを生み出す手法ですね。そして、最後には初めて合唱とオルガンが一緒に演奏する場面となって、今度は「Alelulia」と歌い始めます。これも感動的ですね。
4曲目は、マザー・テレサの言葉がテキストになった「Prayer(祈り)」です。これも弦楽合奏と合唱ですが、途中でポリフォニーが出現するのがちょっと新鮮な印象を与えてくれます。相も変らぬ、泣きの入ったメロディ・ラインには、ちょっと食傷気味だったところに、思いもかけないインパクトが。
と、合唱音楽でもやはり押しつけがましさがてんこ盛りのヴァスクスでしたが、最後の、やはりマザー・テレサのテキストによる「The Fruits of Silence(静寂の果実)」だけは、無駄のないあっさりとした作品で、その分、他の曲に比べたら、いくらかは素直にメッセージを受け取ることが出来るのではないでしょうか。

CD Artwork © Ondine Oy

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by jurassic_oyaji | 2018-07-07 19:49 | 合唱 | Comments(0)