おやぢの部屋2
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2018年 07月 18日 ( 1 )
「不滅」と呼ばないで
 前にチラッと一部をご紹介していた今度の定期演奏会のチラシのデザインが、締め切りギリギリになったところで大幅な修正を余儀なくされていました。それは、メインプログラムであるニルセンの「交響曲第4番」のサブタイトルについてでした。
 あ、その前に、「ニルセン」ですね。これは日本では普通は「ニールセン」と呼ばれているデンマークの作曲家の名前です。原語では「Nielsen」ですから、普通に英語読みをすれば確かに「ニールセン」になりますが、デンマーク語の発音はかなり特殊なんですね。前にも書きましたが、この国の有名な童話作家「Andersen」も、「アンデルセン」ではなく「アナスン」と読むのだそうですからね。ですから、新田さんはしっかり母国語の発音に従って「ニルセン」と呼んでいます。もちろん、これはかなり重要なこと、今まで使われていたものを変えるのにはかなり勇気が要りますが、いつかは「正しい」読み方を広めないと、恥を書くことになってしまいますからね。
 実際のところ、かつて「ドヴォルザーク」と呼ばれていた作曲家も、最近ではかなりのところで「ドヴォルジャーク」と、より正しく呼ばれることが多くはなっていますが、それほど浸透しているとは思えません。「ワーグナー」に至っては、正しく「ヴァーグナー」などと呼ぼうものなら、オタク扱いされそうですしね。
 でも、「ニルセン」はまだ間に合います。なんとか、レコード会社あたりもこの呼び方をするようになってほしいものですね。
 そして、新田さんは、この曲のサブタイトルでもこだわりを見せています。ニルセンはこの曲に、自らデンマーク語で「Det Uudslukkelige」というサブタイトルを与えています。ですから、ベートーヴェンの「運命」や、ショスタコーヴィチの「革命」(今ではあまり使われない?)とはまったく事情が異なり、これをタイトルの一部としてしっかり表記する必要があります。この言葉は、英語に直すと「The Inextinguishable」、直訳すれば「消すことのできないもの」という意味ですね。でも、それではタイトルとしてはあまりに長すぎると思ったのでしょうか、最初にこの曲を日本で紹介した人は、「不滅」と訳してしまいました。たしかに、ヒロイックなエンディングなどは、まさにそんな感じもしますから、誰もそれに異を唱えることはなく、「交響曲第4番『不滅』」は、ほとんど定訳として日本の音楽界に定着してしまいました。「生命の不滅をうたった曲」という解説までありますからね。あるいは、日本のレコード会社が作ったこんなLPのジャケットも。
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 もっとも、これは、オリジナルのアメリカ盤もこんなガチのジャケットでしたけどね。
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 しかし、最近になってそれまであまり知られることのなかったニルセンの私生活などが、次第に公にされてきて(それまでは遺族によってそういう資料が封印されていました)、彼がこの曲を作った頃の状況がはっきりしてくると、どうも「不滅」という訳はこの曲にはあまりそぐわないのではないか、という機運が高まって来たようです。新田さんもそんな考えから、一応よく知られた「不滅」という言葉は残しつつ、直訳のニュアンスを生かした「消し難きもの(不滅)」というサブタイトルを、ご自身のコンサートや著作の中では使われています。
 もちろん、ニューフィルでもこのサブタイトルを採用していて、すでに公式サイトでの演奏会の案内ではそのように表記しています。ですから、コンサートのチラシを作る時も、それをそのまま使ったのですが、デザイン上の配慮で「不滅」という文字が目立つようになっていました。それはそれで、なかなかカッコいい仕上がりだったので、そのゲラをチェックした人たち(私もその一人)は、他の細かい部分での注文は付けたものの、その「不滅」のところはそのままOKを出していました。
 でも、この間の指揮者練習の時に、その原稿をお見せしたら、新田さんはやはり「不滅」よりは「消し難きもの」の方を真ん中に持ってきて目立たせたかったようで、そのような希望を出されたのです。でも、そのデザインでそのように変更したものを見せてもらうと、なんだか「不滅」の文字がとても中途半端に見えてしまうんですね。そこで、新田さんの意向もあって、その「不滅」を削除することにしました。
 デザイン的には、それでとてもインパクトのあるものが出来上がりましたよ。というか、この曲を潔く「交響曲第4番『消し難きもの』」と表記するのは、日本では初めてのことなのではないでしょうか。ある意味、快挙ですね。
 ただ、やはり「不滅」という語感でこの曲に親しんでいる人は多いはずですから(なんたって「オケ老人」にも登場してましたからね)、これが、いわゆる「不滅」なんだよ、という啓蒙が、これから必要になってきます。それは、広報係の腕の見せ所、まずは、これがそのスタートです。
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by jurassic_oyaji | 2018-07-18 23:10 | 禁断 | Comments(0)