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2018年 07月 24日 ( 1 )
White Light/the space between
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Hugo Ticciati(Vn), Matther Barley(Vc) Gareth Lubbr(Voice)
Soumik Detta(Sarod), Sukhvinder Pinky Singh(Tabla)
O/Modernt Chamber Orchestra
SIGNUM/SIGCD532


ヒューゴ・ティチアーティというイギリスのヴァイオリニストは1980年生まれ、その名前から思い当たるかもしれませんが、指揮者のロビン・ティチアーティの3歳年上のお兄さんです。彼もロビン同様に才能に恵まれてヴァイオリニストとして大成、さらに現在はスウェーデンで「O/Modernt(オー・モダーン)」という音楽祭を自ら創設し、大胆な活動を展開しています。
この「O/Modernt」というスウェーデン語は、英語だと「Un/Modern」となるのだそうです。つまり、「Modern」と「Unmodern」、「現代」から「非現代」まで幅広い時代の音楽と関わっている、ということなのでしょう。
このアルバムには、その音楽祭が母体になったオーケストラがティチアーティとともに参加。タイトルの「White Light」というのは、ここで演奏されているアルヴォ・ペルトの言葉に由来、さらに、「the space between」という意味深なサブタイトルは、そこに西洋の音楽とは全く異なる文化と思想を持っているインドのミュージシャンが加わって、「お互いに」インスパイアし合っている様をあらわしているのでしょう。
さらに、ここではきちんと形になっている作品の間に、即興的なインタープレイが挟まって、このアルバムは2枚組という長大なものになりました。めげずに聴いてちょうだい
まずは、ペルトの「シルワンの歌」が、オーケストラの弦楽合奏によって演奏されます。ティチアーティがコンサートマスターとしてアンサンブルをリードしていますね。これはもう「ヒーリング」の定番、ピュアな和声の中に、無条件に身をゆだねてしまう、ある意味「危険」な音楽です。
そして、まずはインド音楽の擦弦楽器サロードと、ヴァイオイリンによる即興演奏です。サロードというのは、シタールよりは小振りの、ほとんどギターぐらいの大きさの楽器ですが、その独特の音色とポルタメントで、一気にインドの雰囲気が高まります。
次に登場するのは、お馴染み、ラトヴィアのヴァスクスです。「Distant Light」というタイトルのその曲は、演奏時間が30分以上かかる単一楽章のヴァイオリン協奏曲です。ティチアーティのソロは、先ほどのペルトよりもさらに浄化されたような、瞑想的な音楽を延々と奏でますが、しばらくするとこの作曲家ならではのヴァイオレンスが爆発、終わりごろにはなんと「ワルツ」まで登場するという起伏の激しさで迫ります。
もう一人の作曲家は、ジョン・タヴナー。この人の、本当は7時間もかかる「晩祷」のための曲の中の「Mother of God, Here」という曲が、最初はサロードの即興演奏が加わったバージョン、次に弦楽合奏だけのバージョンで演奏されます。
その2曲の間をつなぐのが、ギャレット・ルッベという、かつてライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席奏者を務めたこともあるヴィオラ奏者の方の、ヴィオラではなく、「倍音唱法」による即興演奏です。なんでこんなところに入っているのかは謎ですが、このショッキングな「演奏」には圧倒されます。この唱法、モンゴルの「ホーミー」が有名ですが、ここでルッベがきかせてくれるのはそれよりももっと洗練された響きを持っています。全部で2時間かかるこのアルバムの中のたった2分間ですが、これが最大の収穫に思えてしまうほどのインパクトがありました。
しかし、曲はまだまだ続き、その後にはビートルズ・ナンバーが2曲演奏されています。ジョージ・ハリスンが作った「Within You Without You」という「Sg. Pepper」B面の1曲目は、元々インド音楽のパクリですが、それをインドのアーティストが演奏しているのが魅力的、彼らが最後にリリースしたアルバム「Let It Be」に収録されているジョン・レノンの「Across the Universe」では、もろペルト風の弦楽合奏への編曲で、このアルバムになじんでいます。
最後は、インドのメロディをもとに、チェロのマシュー・バーリーをソリストにしたしっかり20分ほどの作品が演奏され、この多くの要素が詰まったアルバムは終わります。

CD Artwork © Signum Records

by jurassic_oyaji | 2018-07-24 23:10 | 現代音楽 | Comments(0)