おやぢの部屋2
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2018年 09月 04日 ( 1 )
TARP/Orchestral Works Vol.1
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Lena Kildahl(Fl), Stanislav Pronin(Vn)
Tobias Ringborg/
Aarhus Symphony Orchestra
DACAPO/6.220668(hybrid SACD)


デンマークの作曲家と言えば、交響曲第4番「消し難きもの」を作ったカール・ニルセンが有名ですが、このSACDはニルセン(1865年生まれ)よりずっとあと、1908年に生まれ、1994年に亡くなったスヴェン・エリク・タープという作曲家のオーケストラ作品を集めたものです。ただでさえ、デンマークの作曲家なんてニルセン以外にはほとんど知られていませんが、このタープさんもそんな一人。なんたって、北欧音楽のバイブルともいえるこの本の巻末にある、編集部が作ったマニアックなリスト「北欧の作曲家200人」にさえ登場していないのですからね。
このデンマークのレーベルDACAPOは、そんなどマイナーな作曲家のオーケストラ作品を、3枚のSACDに録音しました。それは、作曲年代順に構成されているようで、今回の第1集では最も初期の1932年から1942年までの間に作られたものが収められています。
このレーベルのエンジニア、プレヴェン・イワンによるサウンドには、だいぶ前から注目していたのですが、久しぶりに彼の音を聴いてみたくなって、そんな「初物」に挑戦してみました。とっかかりとして、「フルート協奏曲」もありますし。
あのショスタコーヴィチが生まれたのが1906年ですから、ほぼ同じ世代、その頃の音楽界の主流は「新古典主義」でした。19世紀の「ロマン主義」からは距離を置いて、あくまで古典的なストラクチャーを基本にしつつも、表現的には多くの転調を繰り返してスタイリッシュでクールな音楽をめざす動きです(ちょっと乱暴な言い方?)。
タープの音楽も、そんなところからスタートしたのでしょう。ただ、彼の場合はそこに「北欧」のテイストが加わります。このアルバムの最後に収録されている1933年に作られた「古いデンマーク民謡による組曲」では、タイトルの通り、民族的な素材が用いられています。ただ、それはいかにも郷愁を誘うかに見せて、その実結構複雑なリズムなどが用いられていて独特の魅力を放っています。
彼は舞台音楽でもオペラを2つ、バレエを2つ残しています。そのうちの一つ、1942年に作られたバレエ「王位を奪われた調教師」のための音楽がここでは紹介されています。そのお話は、調教師が団長として君臨しているサーカスが町にやって来て、その暴君たる調教師は、軽業師の恋人である美しいダンサーに、「おれの女になれ」とパワハラをもって言い寄るのですが、それを知った団員と、そして動物たちは団結して調教師に立ち向かい、サーカスには平和が訪れる、というあらすじなのだそうです。
これに付けられた9つの音楽は、それぞれにキャラが立っていて、そのシーンが目の前に迫ってくるような的確な描写が施されています。ライオンは、ものものしいオスティナートで不気味さを演出していますし、ダンサーはフルートがかわいらしいワルツを奏でます。道化師はスウィング調のおどけた感じ、鞭を振り回す調教師の暴君ぶりも良くできています。最後のフィナーレには、それらのモティーフが改めて登場するという、まるで「動物の謝肉祭」のような展開です。
フルート協奏曲は、ここで演奏しているオーフス交響楽団の首席奏者、レナ・キルダールがソロを担当、バロックを思わせるポリフォニックな第1楽章と第3楽章ではあくまで軽やかに、ゆったりした第2楽章では、うっとりするようなメロディを淡々と歌い上げています。
ヴァイオリン協奏曲も同じような曲調と構成、ここでのカデンツァは、作曲家でもあるこのオーケストラのコンサートマスター、スタニスラフ・プローニンの自作です。
もう1曲、2曲作られた「コメディのための序曲」のうちの「第1番」が演奏されていますが、これもイケイケの軽やかな音楽が、抒情的で穏やかな部分を挟むという、協奏曲と同じような構成の佳曲です。
録音は期待通りの素晴らしさでした。特に張りのある金管と繊細な弦楽器がリアルに迫ります。もちろん、サラウンドで長崎風に(それは「皿うどん」)。

SACD Artwork © Dacapo Records

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by jurassic_oyaji | 2018-09-04 23:08 | オーケストラ | Comments(0)