おやぢの部屋2
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2018年 10月 02日 ( 1 )
RACHMANINOV/Piano Concerto No.3, SIBELIUS/Symphony No.2
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Gerard Aimontche(Pf)
Roderick Cox/
Chineke! Orchestra
SIGNUM/SIGCD548


こちらでご紹介した、「チネケ!オーケストラ」の第2弾アルバムです。2017年の7月16日にロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで開かれたコンサートのライブ録音、今回はおそらす全プログラムが収録されていて、正味1時間半の2枚組となっています。指揮者は前回とは別の人で、さらにピアノ・ソロが加わります。もちろん、どちらも「黒人」のミュージシャンです。
今回の曲目は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番とシベリウスの交響曲第2番という、重量級の名曲です。前回は「フィンランディア」と「新世界」。一応このオーケストラのメンバーは2管編成の14型に決まっているようですから、それで賄える曲を当面は続けていく方針なのでしょう。ただ、それで演奏できるベートーヴェンあたりにはまだ手を出さないのは、やはりコテコテの「クラシック」に対しては確固たる自信がないのかもしれませんね。ここはまずCDではちょっと傍系の民族的な作品で勝負していこうという方針なのでしょうか。
もっとも、彼らの活動記録を見てみると、アンサンブルの形態のコンサートではベートーヴェンの七重奏曲なども取り上げていますし、オーケストラのコンサートでも曲目は分かりませんがベートーヴェンを演奏しているということですから、まあ普通にレパートリーにはなっているのかもしれませんね。
前回も録音はあまり感心しませんでしたが、まずラフマニノフの冒頭のピアノの音色が、なんとも薄っぺらなのにはがっかりしてしまいました。まるでサンプリングしたピアノの音源のように、ニュアンスが乏しいんですね。しかも、その音像が大きく左右に広がった巨大なものになっています。それこそ、右手と左手の打鍵の位置までが分かるほどに、鍵盤が広がっているイメージです。
オーケストラはというと、これもパートごとにきっちり浮かび上がって聴こえてくるのはいいのですが、全体としての響きが全く伝わってきません。メインマイクよりは、楽器ごとのサブマイクの方を重視したミキシングなのでしょうね。ですから、木管楽器のソロなどは、異様にくっきりと聴こえます。もちろん、定位もきっちりしていますが、フルートとオーボエが何メートルも離れているような位置にいるようで、とても不自然です。
演奏は、ピアニストはとても端正で正確この上ないのですが、それがオーケストラとねっとりと絡み合う、という感じにはなっていません。なにか、とても醒めたラフマニノフのような気がします。
シベリウスになると、やはり前回の「新世界」で感じたのと同じような、ちょっとちぐはぐなところがとても気になってしまいます。いや、もしかしたら彼らのDNAの中では北欧の音楽には共感できないような塩基配列が受け継がれているのかもしれません。日本人が演歌が好きなように。ですから、たとえば第2楽章の低弦のピチカートは、まるでスウィング・ジャズのベース・ランニングのように聴こえますし、それに乗って出てくるファゴットのオクターブ・ユニゾンはとても無表情です。
そういう無表情な歌い方は、第3楽章のゆったりとした部分ではさらに顕著になってくるようです。このしっとりとしたメロディ・ラインを、なぜこんなに淡泊に演奏できるのでしょう。
それはそれで、ある意味潔い行き方なのかもしれません。シベリウスの楽譜から彼らが「民族」として感じたことの答えがこれなのですから、尊重には値するものです。ただ、ひたすら西洋人になりきろうと勤勉に励んできた日本人としては、それはいささか安直なやり方のようにも思えてしまいます。
実は、このCDにはシベリウスの第4楽章のトラックナンバーがその楽章の半ば、最初のテーマがまた戻ってくる、スコアでは「K」の部分に付けられているという、プロの仕事とは思えないとんでもない編集ミスがあります。そんなこともあるので、もうこれ以上彼らのアルバムに付き合うことはないでしょう。

CD Artwork © Signum Records

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by jurassic_oyaji | 2018-10-02 23:26 | オーケストラ | Comments(0)