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2018年 10月 09日 ( 1 )
CHESNAKOV/Teach Me Thy Statutes
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Vladimir Gorbik/
PaTRAM Institute Male Choir
REFERENCE/FR-727(hybrid SACD)


キリル文字だらけのジャケットとブックレットですから、ロシアのレーベルだと思ってしまいますが、これはREFERENCEというれっきとしたアメリカのレーベルのSACDです。録音スタッフもこのレーベルではお馴染みのメンバー、ただ、録音されたのはロシアのサラトフの教会で、演奏しているのも主にロシアの人々です。
そのアーティストの名前は「PaTRAM Institute Male Choir」、この「PaTRAM Institute」というところがいちおう製作者としてクレジットされているので、調べてみたら、フルネームは「Patriarch Tikhon Russian-American Music Institute」つまり「総主教ティーホン・ロシア/アメリカ音楽協会」という教育機関でした。これはロシア正教会のための聖歌を歌う時の指揮者と歌手を育成するために2013年に設立された機関で、現在ではアメリカとロシアの各地で活動を行っているようですね。その名前にある「総主教ティーホン」という人は、アメリカでの布教活動も行った正教会の聖人なのだそうです。割引券を配っていたのでしょうね(それは「クーポン」)。
そこには、プロの歌手が集まった「総主教ティーホン合唱団」という混声合唱団がありますが、ここではその中の男声メンバーを中心にした「PaTRAM男声合唱団」が演奏しています。そしてさらに、モスクワとサラトフの2つの団体のメンバーも加わっています。
そのメンバー表では普通の男声合唱の4つのパートの内訳は10-11-9-12と、ベースの人数が一番多くなっています。しかも、12人のうちの5人が「Bass profundo」、つまり「オクタビスト」ですから、低音はとても充実していることが予想されます。
このアルバムのライナーノーツでは、指揮者のウラジーミル・ゴルヴィクが「実際、このアメリカのレーベルのSACDを最初に耳にするのは、母国の人たちではなく西欧圏の人たちなのですから、そのあたりの配慮をここでの選曲にも込めています」といったようなことを述べています。
そこで集められたのが、この方面では非常に有名なパヴェル・チェスノコフという作曲家が作曲や編曲を行った、徹夜祷と聖体礼儀のための聖歌です。1877年10月25日に合唱指揮者の家に生まれたチェスノコフは、教会音楽関係の教育機関のみならず、36歳の時から4年間、モスクワ音楽院でも作曲と指揮法を学んでいます。
彼は合唱指揮者や作曲家、あるいは教育者として活躍し、生涯に500曲近くの作品を残しています。しかし、ロシア革命以降はその活動は制限され、最後は栄養失調と心臓発作によって亡くなっています。それは大戦中の1944年3月14日のこと、パンの配給の列に並んでいる時でした。享年66歳でした。
「徹夜祷」というと、同じころに活躍したラフマニノフの無伴奏合唱曲(いわゆる「晩祷」)がすぐに思い浮かびます。ただ、ラフマニノフの作品はそれだけで長大な曲集になっていますが、このアルバムはチェスノコフのさまざまな作品から何曲かずつの聖歌をピックアップした、いわば「ベストアルバム」です。その最初の曲は、ギリシャ正教の聖歌を編曲したもので、それはとても洗練されたメロディとハーモニーを持ったものでした。そこからは、「ロシア」とか「スラヴ」といったもので表わされる情感は、ほとんど感じることはできません。
しかし、その次の曲になると、いきなりさっきの「オクタビスト」たちの超低音が聴こえて来て、まさに「ロシア」の大地が広がっています。さらに、3曲目のチェスノコフのオリジナルの作品などは、とてもスマートな和声感を持っていました。そんな感じで、洗練された曲から土臭い曲まで、適度にヴァラエティをもって構成されているのは、やはり「西欧のリスナー」を意識してのことだったのでしょうか。
それを、この合唱団はとてもスマートな歌い方に徹して歌っていました。もちろん、録音もとびっきりの素晴らしさでした。何度かのセッションがもたれたようですが、それぞれに微妙なサウンドの違いがあって、ちょっとオフマイク気味の敬虔な音から、オンマイクで生々しく迫る音まで、いろいろ楽しむことが出来ます。

SACD Artwork © Reference Recordings

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by jurassic_oyaji | 2018-10-09 20:16 | 合唱 | Comments(0)