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2019年 05月 21日 ( 1 )
The Gershwin Moment with Kirill Gerstein
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Kirill Gerstein(Pf)
Gary Burton(Vib)
Storm Large(Voc)
David Robertson/
St.Louis Symphony Orchestra
MYRIOS/MYR022



このMYRIOSというレーベルは、DSD録音によるとても音の良いアルバムを作ることで定評がありました。もちろん、それはハイブリッドSACDでリリースされ、マルチチャンネルによるサラウンドも楽しめるというスペックでした。
ところが、いつの間にかそのSACDから撤退して、ただのCDでのリリースしかなくなってしまったのはなぜなのでしょう。それと、録音もこのアルバムではDSDではなく「DXD」という超ハイレゾのPCMに変更されています。エンジニアは創設以来のシュテファン・コーエンだというのに。
ということで、ハイレゾという観点からはもはや何の魅力もなくなってしまったこのレーベルですが、看板アーティストのゲルシュタインが弾くガーシュインとあれば、聴いてみないわけにはいきません。
というのも、このヴィルトゥオーゾ・ピアニストは、かつてはバークリー音楽院でしっかり「ジャズ」を学んでいたというのですから、ガーシュウィンがただの演奏で終わるわけがありませんからね。しかも、彼をバークリーへと導いたビブラフォン奏者のゲイリー・バートンとの共演まであるというのですから、これはマストです。
まずは、セントルイス交響楽団との共演で、彼らの本拠地であるパウエル・ホールで2017年4月に行われたコンサートのライブ録音です。最初に収録されているのは、お馴染み「ラプソディ・イン・ブルー」です。これは、最近ではもはや珍しいことではなくなりましたが、バックのオーケストラも1924年の初演時のグローフェによる「ジャズバンドのための」バージョンが使われています。つまり、ジャズのビッグバンドに若干のストリングスが加わったという編成ですね。低音にはチューバが加わり、リズム・セクションにはバンジョーも入っているという形です。みんなで決めたのでしょうね(それは「バンジョー一致」)。
このバンド(もちろん、演奏しているのはセントルイス交響楽団のメンバー)が、そんな初演時の雰囲気を出した、とてもいい感じのサウンドを聴かせてくれています。それをバックに、ゲルシュタインも、持ち味の強靭なタッチから繰り出すタイトなリズムで、しっかり「ジャズ」のプレイを披露してくれています。
そこで重要なのは、「クラシック」と「ジャズ」とのバランスではないでしょうか。今では、山下洋輔や小曾根真といった、「本物の」ジャズマンがこの曲に果敢に挑戦している姿を頻繁に見ることがありますが、そこからは、なにかガーシュウィンからは少し距離を置いたものを感じてしまいます。それは、彼らの演奏にはあまりに「ジャズ」の要素が強すぎるからなのではないでしょうか。もちろん、それはそれでしっかりした魅力は感じられるのですが、このゲルシュタインのバランスの取れた節度のある演奏を聴いてしまうと、やはりそれは邪道としか思えなくなってしまいます。
熱狂的な拍手にこたえて、ゲルシュタインが演奏したアンコールは、アメリカのやはりヴィルトゥオーゾ・ピアニスト、アール・ワイルドが作った「Virtuoso Etudes after Gershwin 」から、「Somebody Loves Me」と「I Got Rhythm」の2曲です。いずれも、ガーシュウィンの有名な作品が超絶技巧を駆使して編曲されたものです。
ここで一旦、アルバムは別のコンサートに移ります。まずは、2012年に行われたゲイリー・バートンとのライブで、スタンダード・ナンバーの「Blame It On My Youth」。これはもう完全にジャズのセッションですね。バートンのビブラフォンは、チック・コリアとの録音のような乾いた音ではなく、かなり厚ぼったいサウンドになっているようです。
そしてもう一つは、2014年のライブで、「Summertime」のヴォーカルのバック。もちろん、オペラのバージョンとは全く異なる、ジャジーなピアノです。
そして、先ほどのオーケストラとのコンサートに戻り、「ピアノ協奏曲」と、それに続くやはりアール・ワイルドの編曲による「Embraceable You」です。もしかしたら、実際のコンサートではこちらの方が先に演奏されていたのかもしれません。

CD Artwork © Myrios Classics

by jurassic_oyaji | 2019-05-21 07:49 | ピアノ | Comments(0)