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2019年 07月 11日 ( 1 )
In Sorrow's Footprint
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Rory McCleery/
The Marian Consort
DELPHIAN/DCD34215


新雪の中に遠くまでの足跡が残っているという印象的なジャケットで、タイトルが「悲哀の足跡の中に」です。それは、「スターバト・マーテル」とか「ミゼレレ」といった「悲哀」を表現したテキストによるルネサンスと現代の作品を同じアルバムで演奏することによって、時空を超えた悲哀感を味わってもらおうというコンセプトの表れなのでしょう。しかも「雪」ですし(それは「ひんやり感」)。
ここで演奏しているのは、スコットランド出身のロリー・マクリーリーというカウンター・テナー歌手、指揮者、さらには音楽学者でもある人が2007年に創設したマリアン・コンソートというアンサンブルです。彼の音楽家としてのキャリアが、エディンバラのセント・メアリー大聖堂の聖歌隊ということで、そのような名前を付けたのでしょう。
このアンサンブルは、ルネサンスから現代と、とても幅広いレパートリーを誇っていますが、そのメンバーはきっちり固定されてはいないようです。何人かのコアとなるメンバーを中心に、レコーディングやコンサートにあわせて、イギリス中から有能な歌手を集めているのではないでしょうか。基本的に1パート1人という編成で演奏しているようで、今回のアルバムでは二重合唱の曲もあるので10人のメンバーがクレジットされています。さらに、マクリーリー自身が参加している曲もあります。
彼らは、2000年にやはりエディンバラで創設されたこのDELPHIANレーベルから、これまでに9枚のアルバムをリリースしています。昨年リリースされた今回のアルバムが10枚目、さらに彼らの創設10周年も重なって(もっと言えば、レーベルの創設15周年?)、セールスもなかなか力の入ったものになっていましたね。
まずは、最近よく聴く機会のある作曲家ガブリエル・ジャクソンに委嘱した新作「スターバト・マーテル」です。もちろん、これが世界初録音となります。冒頭はいかにもこの作曲家らしいギラギラしたエネルギッシュなテイストで始まります。それは、たった10人で歌っているとは思えないほどの、分厚い響きでした。それが、この長大なテキストに合わせて様々に変容していくのを聴くのは、とてもエキサイティングな体験でした。途中で、ペンデレツキの同名曲を思い浮かべる瞬間があったのは、なぜでしょう。
そして、同じテキストで(微妙に異なる部分もありますが)歌われるパレストリーナになると、今まで大人数の合唱で聴いてきたこの曲とは全く異なる、もう少しアグレッシブな印象が伝わってきました。ここでは8人のメンバーが、決して禁欲的な歌い方ではなく、適度のビブラートをかけて各々の声部を主張することによって、そこからは肉感的な味わいさえ感じられてしまいます。
そして、「Miserere mei, Deus(神よ、われを憐れみたまえ)」という歌い出しで始まる、詩篇51をテキストにした有名なアレグリの「ミゼレレ」では、録音の上でとても興味深い配慮がありました。ご存知のように、この作品はメインの合唱団(5声部)とサブの合唱団(4声部)が互いに受け応えをするという形を取っています。おそらく、実際に教会で演奏される時には、メインは正面の祭壇、そしてサブは後ろか横にあるバルコニーで歌うことが想定されているのでしょう。よくある録音では、そのサブの合唱団にビシャビシャのエコーをかけて、遠近感を強調していますが、ここではエコーには頼らずに、もっと自然な音像が遠くから聴こえてくるような仕上がりになっているのです。
実は、このレーベルではサラウンド録音が聴けるBD-Aも出しています。ですから、これもオリジナルの録音はサラウンドのマイクアレンジでマルチトラックによる録音がされていたのではないでしょうか。
これに対応する「現代版」は、スコットランドの作曲家ジェイムズ・マクミランが2009年に「ザ・シックスティーン」のために作った作品でした。ここにはアレグリのストイックさは全くなく、現代人の抱える「悲哀」が、生々しく伝わってきます。

CD Artwork © Delphian Records Ltd

by jurassic_oyaji | 2019-07-11 21:11 | 合唱 | Comments(0)