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カテゴリ:ポップス( 108 )
The Beach Boys with the Royal Philharmonic Orchestra
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The Beach Boys
Sally Hrebert, Steve Sidwell/
The Royal Philharmonic Orchestra
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以前ご紹介したロイ・オービソンと同じ企画、昔のアーティストの音源にロイヤル・フィルの演奏をオーバーダビングしたという「ウィズ・ザ・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ」シリーズの最新盤は、「ザ・ビーチ・ボーイズ」といういやらしい名前の(それは「ビーチク・ボーイズ」)グループです。プレスリーやオービソンの時はSONYからリリースされていたのに、今回はUMGからのリリースです。もちろん、プロデューサーは同じですから、ディストリビューションは、アーティストのオリジナルのレーベルから、という契約なのでしょう。
初期のビーチ・ボーイズはアメリカのCAPITOLのアーティストでしたから、EMIの傘下、それが、もはやEMIはなくなってしまいましたから、その買収元のUMG(ユニバーサル・ミュージック・グループ)から、ということなのでしょう。クラシックばかり買っていると、EMIはWARNERだとつい思いたくなってしまいますが、それはほんの一部分で、大部分のアイテムはUMGの方に行っていたのですね。
オービソンの場合は、基本的にヴォーカルのトラックだけを残して、あとはオーケストラの新しい録音で伴奏を入れて曲を完成させるという方式をとっていましたが、ビーチ・ボーイズの場合はそもそも「バンド」としてのサウンドが確立されている曲ですから、ここではオリジナルのトラックがほとんどそのまま使われているようです。ですから、今回のオーケストラの役目は、軽くバックにストリングスを加える、といった程度のものなのでしょう。ただ、それではせっかくのフル・オーケストラを使った意味がないと思ったのでしょうか、それぞれの曲の前にオーケストラだけで新たに作られたイントロが挿入されています。
まあ、個人的には、このバンドにはそれほどの思い入れはないので、これもありかな、という感じですね。それよりも、おそらくマルチ・トラックのテープから新たにリミックスを行っているのでしょうから、バンドやコーラスの音のクオリティ自体が格段に向上しているのがうれしいですね。これは、ビートルズのアルバムでリミックスを行った結果、音が劇的に変わったことと同じ理由によるものなのでしょう。
そんな音の違いを具体的に比べてみたくて、オリジナルと比較しながら聴いてみたのが、彼らのある意味代表作「Good Vibrations」です。これは、それまでのノーテンキなサーフィン・ホットロッドのスタイルから一変して、作品としての深さを追求し始めたものとして語られることの多い曲ですが、確かにここでのアレンジにはかなりぶっ飛んだものが感じられます。一番驚くのは、あの「テルミン」にとてもよく似た音が随所で聴かれることです。
しかし、これは厳密には「テルミン」とは異なる楽器であることが、今回のアルバムのクレジットで分かりました。そこでは「Electro-Theremin: Paul Tanner」とあったのです。ポール・タナーという人は、元々はグレン・ミラー楽団でも演奏していたトロンボーン奏者でしたが、テルミンの音に魅せられて、それよりももっと演奏が簡単な楽器「エレクトロ・テルミン」を考案したのです。これはヴォリュームつまみでダイナミックス、そしてスライド・バーでピッチを操作して、テルミンそっくりの音を出すという楽器です。
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(エレクトロ・テルミンを演奏するポール・タナー)

この楽器は彼が作らせた1台しか存在していなかったのですが、その音がこの「Good Vibrations」の中での彼自身の演奏によって聴くことが出来るのですね。
オリジナルの録音には、そんな楽器の他にフルート、クラリネット、ピッコロやチェロが加わっています。そのチェロはオリジナルでもかなり目立つのですが、ここではおそらくRPOによってさらに増幅されているのでしょう。そして、面白いのが、フルート。オリジナルでは伴奏のハーモニーに徹していてほとんど聴こえないのですが、ここでは明瞭に聴こえてくるスケールのソロが加えられています。そんなところを探していると、とても楽しめますよ。

CD Artwork © UMG Recordings, Inc.

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by jurassic_oyaji | 2018-08-09 21:24 | ポップス | Comments(0)
Quiet Winter Night
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9 Vocalists
Hoff Ensemble
2L/KKC 10009(2L-87SACD/hybrid SACD)


「静かな冬の夜」ですって。まさに、真冬に暖炉のそばで聴くようなアルバムですね。でも、これはリリースされたばかりの新譜なものですから、それをこんなくそ暑い「雷でやかましい夏の夜」に聴くことになってしまいました。
そもそもこのアイテムは日本国内だけでの商品です。もともと2Lからは2012年にリリースされていたのですが、それを日本の代理店(キングインターナショナル)は国内販売のルートには乗せなかったようで、いまごろになってわざわざ国内盤仕様でリリースされていました。
最初に2Lが出したのはBD-AとLPだけでした。それが、今回はハイブリッドSACDになっていました。なんでも、このLPを入手していたさるオーディオ評論家の方が、えらくその録音を気に入っていて、ぜひともSACDで販売してほしいと代理店に圧力をかけたそうなのですね。さらにオーディオ指向ということで、CDレイヤーは今話題の「MQA-CD」になっています。これは、なんでもそれなりの機器を使うと、CDでハイレゾ音源を聴くことが出来るというものなのだそうです。まあ、これが普及するよりも、CDそのものがなくなってしまう方が早いような気がしますが。
このアルバムは、先日こちらでご紹介したノルウェーのジャズ・ピアニスト、ヤン・グンナル・ホフが、2011年に、同じ教会で録音していたものです。写真を見るとその頃はまだ「5.1サラウンド」でしたから、アレイも最近の「7.1.4」の二段重ねのものに比べるとシンプルな形でしたね。マイクのポジションは前と同じ、向かい合ったパーカッションとピアノの間です。
ここでのアンサンブルは、ホフのピアノを中心にしたピアノ、ベース、パーカッションというトリオが基本形になっていて、そこにトランペット、ギター、さらにはニッケルハルパとハリングフェレといった民族楽器も加わります。さらに、ヴォーカリストも全部で9人の名前がクレジットされています。
演奏されている曲はホフのオリジナルではなく、1999年ごろから始まったノルウェーの「Jul i Blåfjell(ブローフィアルのクリスマス?)」というテレビ・シリーズのためにゲイル・ボーレンとベント・オーセルードという人たちが作った音楽です。それはもう、鄙びた雪深い山村でのクリスマスの情景が目に浮かんでくるような、伝承曲のテイストを多分に取り込んだ優しい音楽ばかりです。それを、フォーク・シンガーのようなだみ声の人など、クラシックとは全く縁のないヴォーカリストたちがしっとりと歌い上げています。
ホフはアレンジを担当。トランペットやギターはあくまでまろやかな音色でサポートしています。ギターは、エフェクターでまるでオルガンのような持続音まで出していますね。
ヴォーカルは同時録音ではなく、まずバンドだけで演奏して、後日楽器がなくなった同じ会場でヴォーカリストたちがバンドに使ったのと同じマイクの前で歌って、それをオーバーダビングしているようですね。ボーナストラックで、「インストゥルメンタル・バージョン」というのが入っていますが、それはその前に歌っていた同じ曲の「ヴォーカル・バージョン」のカラオケでしたから。
もちろん、サラウンドで聴けば、このヴォーカルはフロントの真ん中にしっかり定位して、とても豊かな残響が取り込まれています。ピアノの左右にギターとベースが位置していますし、パーカッションはリアからサイドに広がって、パッションを放っています。
ただ、日本の代理店が用意したライナーノーツは、どうしようもなく愚かしいものでした。そもそも、1曲目のメンバーでギタリストの名前が抜けています。そして、件のオーディオ評論家の書いた文章の貧しいこと。
もっと言えば、真にオーディオを売り物にしたいのならば、SACDではなくBD-Aでリリースすべきでした。そうすれば、クリスマスのシーズンには、もう一度しっとりと聴いてみたい素敵な演奏と録音だな、と心から思えていたことでしょう。

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS

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by jurassic_oyaji | 2018-06-30 21:16 | ポップス | Comments(0)
Hans Zimmer Live in Prague
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EAGLE ROCK/EVB 335709(BD)


どうしても「ハンス・ツィンマー」と呼びたくなってしまいますが、一応アメリカ式に「ハンス・ジマー」と呼ぶのが慣例になっているので、それに従いましょう。そんな名前でも分かる通り、生まれたのはドイツ、その後ロンドンに移住してさらにアメリカに渡り、今では世界的な映画音楽の作曲家になっている人ですね。
彼の作る音楽は、とても骨太でダイナミックなものから、繊細なものまでかなり幅広いような印象がありました。その中で、生のオーケストラと電子音(シンセサイザー)との絶妙なバランスによる独特なサウンドは、それまでの映画音楽のグレードをワンランク高めたものなのではないでしょうか。
そんなジマーが、2016年にプラハで行ったコンサートの模様が、2017年にBDなどでリリースされていました。
会場は、プラハのO2アリーナという、収容人員18,000人の屋内競技場です。そこを埋め尽くした聴衆の前で、ジマーはオープニングから度肝を抜いてくれました。まずはジマーが一人で現れて「Driving Miss Daisy」のテーマをピアノで弾き始めます。そのピアノも普通のアップライトではなく、もう少し小振りのスピネットタイプのおもちゃみたいな楽器ですから、なんかジマーのサウンドとはミスマッチ。そこに、クラリネット奏者が登場して、デュエットになります。そのクラリネットがすごく上手、あとで調べたらリチャード・ハーヴェイという、やはり映画音楽などを作っている作曲家でした。
さらに、セクシーなボンデージ・ファッションのヴァイオリンが2人と、スケルトン・チェロ(ヤマハ)が一人加わってひとくさりアンサンブルが披露されますが、少しリズム感がタイトになってきたな、と思った瞬間、後ろのカーテンが上がってそこに並んだドラムスとパーカッションがいきなり現れました。
曲は「Sherlock Holmes」に変わり、ジマーはなんとバンジョーを弾きだしましたよ。それが一旦暗転でブレイク、ベースのソロで「Madagascar」のリフが始まり、ジマーは燕尾服を脱いでシャツ姿になり、ピアノに向かいます。そして、そのリフが盛り上がってきた瞬間、さらに後ろのカーテンが上がって、ストリングスとブラス、そしてコーラスが現れました。これには客席も驚いて、スタンディング・オベーションですよ。このメンバーはチェコ・ナショナル交響楽団と合唱団ですって。
それからは、聴いたことのあるジマーの曲たちのオンパレード、オーケストラを駆使した重厚なサウンドから、ほとんどEDMといった感じのテクノ・サウンドまで、幅広いジャンルを網羅したジマーの世界が広がります。
演出も、照明がとても多彩で目がくらむほど。そして、最大の魅力がそのサラウンドのミックスです。いまや、映画のサウンドトラックはサラウンドが当たり前になり、単なるオーケストレーションではなく、しっかり音場まで設計されたアレンジが行われています。時には、それが的確な表現となって、映画全体のコンセプトを伝える大きな要素ともなりえています。そんな「思想」までが、このBDのサラウンド・ミックスでは見事に反映されているのです。
具体的には、オーケストラと合唱はリアに定位、フロントにバンドが広がるという、まるでステージのど真ん中にいるような定位になっています。ただ、ドラムスやパーカッションはシーンに応じて定位が変わり、前からも後ろからも迫ってきます。
スケルトン・チェロは、常にフロントでソリスティックな演奏を繰り広げています。この人は中国系のティナ・グオというチェリストで、クラシックのチェロや、二胡までも演奏します。なんでも、五嶋みどりとトリオを協演したこともあるのだとか。ただ、何カ所か、間違いなくソロを弾いているのに、音が全然聴こえないところがありました。これは音響のミスなのでしょう。
「動く」ジマーを見たのはこれが初めて、かなり老けた外観はちょっと意外でした。でも、このライブのサウンドには圧倒されました(あっとおどろくことばかり)。

BD Artwork © Eagle Rock Limited

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by jurassic_oyaji | 2018-06-21 20:17 | ポップス | Comments(0)
POLARITY
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Jan Gunnar Hoff(Pf)
Anders Jormin(Bas)
Audun Kleive(Dr)
2L/2L-145-SABD(BD-A, hybrid SACD)


この、超弩級の録音を誇る2Lレーベルは、もっぱら合唱曲や器楽曲といったクラシックのレパートリーで制作を行っていますが、ほんの少しジャズのアルバムもリリースしています。それは、自国ノルウェーのジャズ・ピアニスト、ヤン・グンナル・ホフのアルバムです。これまでに、4枚ほどのアルバムが出ています。
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これが、録音会場の写真。今回は、ホフにとっては初めてとなるトリオの編成でのセッションです。ベースはアンデシュ・ヨルミン、ドラムスはアウドゥン・クライヴェ、いずれも北欧圏では最高と言われているミュージシャンだそうです。そして、ホフはここではピアノの他に、チャーチ・オルガンとシンセサイザーも演奏しています。おそらくこれはオーバーダビングで重ねているのでしょう。彼の右手にあるのがシンセサイザー。これは往年の名器、「プロフェット6」です。6声のアナログ・ポリフォニック・シンセですが、この前の5声の機種「プロフェット5」は、あのYMOも使っていて一世を風靡しましたね。もう1台、左手にあるオルガンはドローバーが付いているのでハモンドっぽいのですが、こんな一段鍵盤の機種はないはずなので、別のメーカーの製品でしょう。
それと、この教会でのセッションでは、楽器や録音機材以外にいろんなものが見えますね。ドラムスの後ろには、無数の座布団が敷かれていますし、この3人の間にはなんと多量の薪が撒き散らされていますよ。これは、なにか音響的な意味があるのでしょうね。特に木材は良い影響を与えるはずです。
もちろん、このレーベルですからこれはハイ・クオリティのサラウンド録音です。そのためのメイン・アレイがさっきの薪のそばにありますから、再生される時はその位置での音場が感じられるはずです。たしかに、正面の左寄りにピアノ、右寄りにベース、そして後ろからはドラムスが定位しています。
この3人が奏でる楽器たちの音はあくまでクリアでナチュラルでした。ピアノは刺激的なタッチは全くなく、暖かいハーモニーが柔らかく漂っています。ベースもなんというリアルな聴こえ方なのでしょう、時折登場するアルコによるフラジオレットには、この世のものとは思えないほどの妖艶さが漂っています。そして、ドラムスの驚異的なテクニック。基本、使っているのはノーマルなドラムセットなのですが、そこから奏でられる様々なテクスチャーは、まるで魔法のように全体の音色を操作しています。そう、このドラムは「歌って」いるのですよ。
ここで演奏されている曲は、ホフのオリジナルが12曲、それぞれに英単語一つのシンプルなタイトルが付いています。曲調はバラードあり、アップテンポあり、さらにはもろインプロヴィゼーションというハードなものありという多彩さですが、いずれもキャッチーなテーマが使われているのでとても親しみがわくものばかりです。ホフという人は、稀代のメロディ・メーカーなのではないでしょうか。
中でも、なにかとても懐かしい思いに誘われる北欧感のようなものが漂っている曲が、印象に残っています。最初に演奏されている「Innocence」あたりが、そんなテイストの曲。まるであの「Frozen」のテーマ曲のようなイントロで始まるとてもかわいい曲です。最後の「Home」という曲も魅力的ですね。まるでコラールのようなテーマが何度も繰り返され、その間に全く別のテイストのフレーズが入りますが、最後にはそのコラールに戻ってくるあたりが「Home」なのでしょうか。「Sacred」という曲では、ピアノは全く登場せず、オルガンだけになっていました。これも意味深。
これをサラウンドBD-Aで聴くと、いつまでもこんな音に浸っていたいという至福の時間が過ぎていきます。ところが、同じ音源をSACDで聴くとそんなアナログ感満載のソフトな雰囲気が全くなくなり、なにかとげとげしい感じの音になってしまいます。改めて、SACDのスペックの不十分さが体験できてしまいました。

BD & SACD Artwork © Lindberg Lyd AS

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by jurassic_oyaji | 2018-05-24 20:21 | ポップス | Comments(0)
A LOVE SO BEAUTIFUL
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Roy Orbison
Royal Philharmonic Orchestra
SONY/88985497092


ロイ・オービソンと言えば、彼が歌う「Oh, Pretty Woman」が、ジュリア・ロバーツとリチャード・ギアが出演した1990年の映画「プリティ・ウーマン」の主題歌として一躍有名になったロック・ヴォーカリストですね。ただ、この曲自体は1964年のヒット曲ですし、オービソン自身も1988年には亡くなっています。ですから、この曲はあくまで「クラシックス(=懐メロ)」という扱いで、採用されていたのでしょう。
実際、彼が立て続けにヒット曲を出していたのは1960年代でした。それが、晩年の1980年後半には、元ビートルズのジョージ・ハリスンが結成したバンド「トラヴェリング・ウィルベリーズ」のメンバーとして「リバイバル」することになります。しぶといですね(それは「サバイバル」)。このバンドでオービソンの声の魅力にとりつかれ、さらに映画に後押しされてファンになったという人も多かったのではないでしょうか。それほど、彼の声はその辺のロック・ヴォーカリストとは一線を画した格別の魅力を放っていました。
亡くなってから30年近く経って、去年の11月にこんなアルバムがリリースされました。これは、オービソンが残した音源から彼のヴォーカルだけを抜き出し、そのバックを新たに録音して新しいバージョンを作った、というものです。
マルチ・トラックの中の彼の声に合わせて、リズム・トラックを新たに録音します。そして、さらにそこにストリングスを加えるのですが、そこにスタジオ・ミュージシャンではなく、ロイヤル・フィルという「普通の」オーケストラを使ったというのが、このアルバムの目玉です。
実際は、このクラスのオーケストラがスタジオの仕事をするのは日常茶飯事ですから、それほどありがたがることはないのですが、ここでは確かにその間違いなく大人数の弦楽器が演奏している厚ぼったいサウンドには、とてもゴージャスさが感じられます。
それと同時に、ここではコーラスも新たに加わっていました。それは10人以上のメンバーが参加している、ちゃんとした「合唱団」ですから、こちらの深い響きにもとても魅了されてしまいます。
つまり、そんなキレキレの、最新の録音によるバックの中に、半世紀以上前に録音されたヴォーカルが入っても、全く何の違和感がないということに、本当は驚くべきなのでしょうね。それだけ、彼の歌声には時代を超えた普遍性があるということになりますね。
60年台の録音と言えば、ヴォーカルには派手なエコーがかかっていたものです。ここでも、オービソンの声はその「エコー込み」で使われていて、まわりのサウンドもそれに合わせてかなり深めのエコーがかかっています。そうなると、あの頃の例えばフィル・スペクターが作り上げたびしゃびしゃのエコーの世界が、方向性は同じでも全く異なる景色で現れてきます。
それが、80年台の曲になると、そのエコーが控えめになってストレートな声とサウンドに仕上がっているのも、面白いところですね。この時代の「I Drove All Night」や「You Got It」では、オリジナルでは当時の仲間のジェフ・リンなどがギターやバッキング・ヴォーカルで参加していました。ですから、今回のプロジェクトではオービソンの声と一緒にそれらのパートもそのまま残して、新たに別のパートを付け加えていましたね。
いや、なぜか入手したのはドイツ盤だったのですが、そこにはボーナストラックでヘルムート・ロッティという、ベルギーのシンガーがオービソンと「デュエット」までしているんですよね。これが傑作、歌っているのが60年台の「Only the Lonely」なので、ロッティにもおんなじエコーがかかっているんですよ。
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もっとすごいのは、このメンバーがそのまま「ライブ・ツアー」を行うことを告げるこのポスター。オービソンのホログラムを使って、このアルバムと同じものを「生」で聴かせようとしているんですよ。幸せな人だな、と思いますね(演奏するのが「The Royal Philharmonic Concert Orchestra」というのがおかしいですね)。

CD Artwork © Sony Music Entertainment Germany GmbH

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by jurassic_oyaji | 2018-02-13 21:49 | ポップス | Comments(2)
ザ・ビートルズ・LPレコード・コレクション/No.1 Abbey Road
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デアゴスティーニ・ジャパン刊
ISBN978-4-8134-2163-1



「デア・ゴスティーニ」ではなく、「デ・アゴスティーニ」だったんですね。最近知りました。いずれにしても、今までこの会社の製品にはなんの関心もありませんでした。例えば「オペラ全集」などを出したとしても、そこには何の価値も見いだせなくて、通り過ぎていましたね。最近、「ジャズ全集」を出した時にも、まあ、このところLPに対する再評価が高まってるので、そんな波に乗って、テキトーにライセンスを取って、国内の工場でプレスしたものを出しているのだろう、と思っていましたね。
そこに、なんとビートルズのオリジナル・アルバムなどというものが登場したではありませんか。ビートルズの音源に関しては、とても厳しい管理がなされていますから、正規にリリースされるものは全てかつてはEMI、今ではUNIVERSALの中のCalderstoneというディヴィジョンからのもの以外は認められないことになっているはずです。それが、こんな畑違いの会社から発売されるなんて、いったい、実体はどんなものなんだろうという興味だけで、初回発売の「Abby Road」を買ってみました。
宣伝媒体では、そもそもジャケット自体がこんな感じになっていたので、そういう「雑誌仕様」のデザインなのかと思っていたら、これはあくまで全体のカバーで、その中身はこんな感じでした。
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このほかに、しっかりシュリンク包装されたLP本体が入っていましたよ。2012年に出たこれの「正規盤」は持っていましたから、それと比較してみると、全く同じもののように見えました。ジャケットもレコード盤も中袋もレーベルも、正規盤と同じ大きさ、重さ、材質、匂い(?)ですから、これは正規品と同じ製造工程で作られたものに間違いありません。
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ただ、裏ジャケットにあるクレジットを見ると、EMIからCalderstoneに変わっているほかに、「©2016 Licensed by Universal Music group to De Agostini Publishing S.p.A.」という一言が加わっています。したがって、レーベルの周辺に印刷されているテキストも変わっています。左がEMI、右がデアゴスティーニです。
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ですから、クレジット上の表現では、「2009年にデジタル・リマスターを行って、2012年に製造されたLPを、デアゴスティーニが販売している」ということになるのでしょう。つまり、EMI(今ではUNIVERSAL)が製造したものと全く同じLPが、本屋さんで簡単に手に入る、ということですね。値段も輸入品を定価で買うよりはるかに安いですからね。そもそも、これは日本だけではなく、イタリアやイギリスですでに出ていたものだったのです。世界的なマーケットに向けられていたのですよ。ですから、付属のブックレットは、英語版を翻訳したものです。
もちろん、これはEMIが製造したLPの在庫をそのまま流用したのではなく、今回ジャケットは新たに印刷され、LPも新たにプレスされています。それは、マトリックス・ナンバーを見れば一目瞭然。
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上がEMI、下がデアゴスティーニです。マトリックス表記のシステムが全然別物ですね。
つまり、今回はカッティングも新たに行われたことになります。そのマスターは2009年に作られたデジタル・マスターですが、おそらくカッティングのエンジニアも2012年とは別の人なのでしょう。その違いが、音の違いとなって実際に現れています。結論から言うと、今回のデアゴスティーニのカッティングの方が、以前のEMIのものより良い音になっています。具体的には、カッティングのレベルがほんの少し高いので、音にメリハリが増していますし、特に内周に行くにしたがって音が劣化する「内周ひずみ」がほとんど感じられません。ですから、A面後半の「Octopus's Garden」、B面後半の「Polythene Pam」や「She Came in through the Bathroom Window」でのコーラスや「Golden Slumbers」でのストリングスなどは、比較にならないほど生々しく聴こえます。
これはすごいことです。さらに、「1」や「サージェント・ペッパー~」のように今ではLPでもジャイルズ・マーティンのリミックス盤しか入手できなくなっているものでも、オリジナル・ミックス盤が手に入るはずですから、これもとても貴重です。CDの音には飽き足らず、それなりのLP再生装置を持っている人には、絶対のおすすめ品です。

Book Artwork © K.K.DeAgostini Japan

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by jurassic_oyaji | 2017-08-31 22:22 | ポップス | Comments(2)
Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band/Anniversary Edition
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The Beatles
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今日、6月1日はこのビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」という長ったらしいタイトルのアルバムが発売された記念日なのだそうです。それは1967年のこと、ですから、本日は発売50周年記念日となります。ところが、それはイギリスでの発売日で、日本で発売されたのは7日5日なんですよね。それなのに日本盤の帯に「イギリスと同時発売!!」とあるのは笑えます。なんせ、半世紀も昔のことですから、別に動じることはありません。
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The Beatles Album Visual Book(2000年リットーミュージック刊)より

その頃はEMIのアーティストだったビートルズも、今ではユニバーサルに移っています。しかし、彼らのアルバムの大部分は、EMI時代の2009年に新しくリマスタリングされたものですから、もうそれで十分と思っているユーザーに対して、ユニバーサルとしてのアイテムを用意したいという動きはあったのでしょうね。そこで、ジョージ・マーティンの息子のジャイルズ・マーティンに新たにリミックスを行わせて、「1」のリミックス盤とか、長らく廃盤になっていた「ハリウッドボウル・ライブ」のリミックス盤をリリースしてきたのでしょう。そして、「サージェント~」の50周年という「大義名分」を後ろ盾に、ついにオリジナルアルバムのリミックスに手を付けることになりました。
ジャイルズが行ったのは、現代のリスナーにとって聴きやすい音に仕上げる、ということだったのでしょう。半世紀前はまだステレオというのは特別なものでしたから、このアルバムもイギリスやアメリカではステレオ・ミックスとモノラル・ミックスの2種類が用意されていました。ステレオにしても、今聴くと単純に「右」、「真ん中」、「左」とヴォーカルや楽器を割り振った、というものでした。それが、ここではすべてのメイン・ヴォーカルは真ん中に定位させています。そして、コーラスはその周りに広がりを持って定位、ということまで行われていて、真の意味での「立体感」が表現できるようになっています。もちろん、それぞれの音のクオリティも格段に向上しています。
それはそれで、初めてこれらの作品に触れる人にとってはありがたい配慮なのですが、長年聴きなれたファンにとっては、ちょっと納得のいかないところもあるのではないでしょうか。たとえば、「A Day in the Life」では、ジョンのヴォーカルは右から始まって真ん中、左と移動するという形が曲の印象として刷り込まれていますから、それを真ん中に固定されてしまうと戸惑ってしまいます。
そして、もっと重要な問題も。このアルバムでは何曲か、ミキシングが終わったところで、全体のテープスピードを少し操作してピッチを変えているものがあります。その、最終のカッティング用のマスターでリマスタリングを行っていた分には何の問題も出てこないのですが、ジャイルズの場合、元のスピードのままのテープでミックスを行って、それを最終的にデジタルでテープスピードを変化させているために、オリジナルとはピッチが変わってしまっているのですよ。それは、同梱されていたCDの中に入っていた「When I'm Sixty-Four」で最終的に採用されたテイクと聴き比べて分かったことです。オリジナル、つまり2009年のリマスター盤ではほぼ6%早くなっていたのに、今回のリミックス盤では4%しか早くなっていませんでした。実際に聴いてみると、オリジナルでは半音高く聴こえますが、リミックス盤ではとても微妙、製作者の意図とは別物になっています。
正直、「With a Little Help from My Friends」でのポールのベースを聴いた時には、そのクリアな音に狂喜してしまいました。しかし、こんないい加減なことをやっていたのには、本当にがっかりです。おそらく、これからも他のアルバムのリミックスは行われるのでしょう。しかし、非常に残念なことですが、それを聴く時にはオリジナルとは別物であるという意識で接する必要がありそうです。

CD Artwork © Calderstone Productions Limited

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by jurassic_oyaji | 2017-06-01 21:05 | ポップス | Comments(0)
Electronic Sound
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George Harrison
ZAPPLE/02


先日「ザップル・レコード興亡記」を読んでとても気になってしまったジョージ・ハリスンの「Electronic Sound」を実際に聴いてみることにしました。ビートルズ時代のジョージはとても好きだったのですが、ソロになってからのアルバムなどは全く興味がなかったのでどれも聴いたことはありませんでした。今回チェックしてみたら、やはり元ビートルズとあって、それらのアルバムはとても手厚い待遇を受けていたことが分かりました。CD化された後でも、何回もリイシューが繰り返されていたのですね。なんと、今年の2月にはジョージのすべてのソロ・アルバム13枚が、紙ジャケット仕様でリリースされていました。それは国内盤のみのことなのだそうです。なんでも、国内でLPが発売になった時の「帯」までが、ミニチュアで復刻されているのだとか。しょうもない気がしますが、マニアにはたまらないのでしょう。
この「Electronic Sound」は、オリジナルは1969年のLPですが、それは普通のシングル・ジャケットで、録音データなどは中袋に印刷されていたようですね。今回入手したのは、2014年に新たにリマスタリングが行われた輸入盤CD、それはダブル・ジャケット仕様の紙ジャケットで、CDはLPの中袋をほぼ忠実に再現したものの中に入っています。
このCDには、オリジナルにはなかったブックレットが入っていて、そこには多くの写真と、2014年に新たに書き下ろされたライナーノーツが掲載されています。それらは資料としてはとても興味深いものでした。まず、ダブル・ジャケットの見開きの部分に、ジョージ自身が購入した「モーグ」の、2014年に撮影された写真があるのが感激ものでした。それは、「モーグIIIP」という、ポータブル・タイプでした。
さらに、ブックレットではこの同じ楽器が「アビー・ロード」のセッションで使われた時の写真なども見ることが出来ます。ライナーノーツによると、それは確かにこのアルバムが録音された時に使われたもので、1969年の8月にアビーロード・スタジオに運び込まれたのだそうです。他のデータによると、セッションでこれが使われたのは8月5日から19日までの間ですから、それは間違いありません。「アビー・ロード」には、しっかりジョージの「モーグ」が使われていたのでした。
ただ、この写真ではセットアップを行っているのがジョージ・マーティンのようで、ジョージをはじめ、他のメンバーはそれを眺めている、という感じに見えてしまいます。おそらく、音を作ったのはすでに同じものを持っていて使い慣れていたジョージ・マーティンだったのでしょうね。ジョージたちは単にキーボードでフレーズを演奏しただけなのでしょう。
もちろん、中袋のデータでもわかるように、1曲目の「Under the Mersey Wall」が録音されたのは1969年の2月ですから、ジョージがこの「モーグ」を入手した直後なのですが、2曲目の「No Time or Space」が録音されたのが1968年の11月、しかも録音場所はカリフォルニアなのですから、これと同じ楽器ということはありえません。この点こそが、「興亡記」でもしっかり述べられ、今回のライナーノーツでも語られていることなのですが、この曲を実際に「演奏」していたのは、「アシスタント」というクレジットがあるバーニー・クラウスに間違いないでしょうね。そのカリフォルニアでのセッションが終わってから、ジョージがクラウスに頼んでデモ演奏をしてもらったものを無断で録音して、それを編集しただけだ、というクラウスの主張は、「真実」に限りなく近いものなのでしょう。
実際にこの2曲を聴いてみると、それははっきりします。ジョージ自身が演奏した「Under the Mersey Wall」では、いかにも偶然に出来た音を羅列したという感じで、逆にそれがまるでジョン・ケージの作品のような味を出しているのに対して、「No Time or Space」の音は、明らかにこの「モーグ」の操作に熟達した、確かな意思を持って作り上げられたものなのですから。

CD Artwork © G. H. Estate Limited
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by jurassic_oyaji | 2017-05-11 20:24 | ポップス | Comments(0)
Superfly 10th Anniversary Greatest Hits/"LOVE, PEACE & FIRE"
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Superfly
WARNER/WPCL-12621/3


今の音楽シーンでは、腐るほどのアーティストが日々新しい曲を垂れ流していますが、その大部分からは聴いていてなんの魅力も感じられません。それは彼(彼女)たちが、自分の楽器である「声」に関してとても無神経であることが、主たる原因です。いやしくも「声」で何か音楽的なメッセージを送ろうという、とても大切なことを志したのなら、それに見合うだけの修練は絶対に必要です。しかし、その修練の意味を勘違いしていて、小手先だけのテクニックにおぼれて決して他人には受け入れられることのない奇異な歌い方を「個性」だと思い込んでいるアーティストの、なんと多いことでしょう。
でも、中には「歌を歌う」ということがどういう意味を持っているのかをしっかり認識していて、とても素晴らしい「声」でその音楽をきちんと伝えてくれる人もいます。そんな中で、最近特に気に入っているのがSuperflyです。だいぶ前からその声は耳にしていたような気がしますが、はっきり彼女だと意識して聴くようになったのは2012年の「輝く月のように」あたりからでしょうか。テレビドラマの主題歌として使われていましたね。
それは、曲自体もとてもキャッチーなメロディを持ったものでしたが、なんと言っても彼女のヴォーカルの素晴らしさには感服させられました。特に、伸びのあるハイトーンは魅力的です。それはまさに理想的な声でした。
それ以来、彼女の声はたまたまラジオなどから聴こえてきても、すぐ分かるようになりました。本当に好きな人の顔なら、どんなに遠くからでも見分けられる、そんな感じでしょうか。ですから、すでに何枚かリリースされているアルバムをなにか買って、しっかり聴いてみようと思いはじめていました。
そんな矢先に、タイミングよくこんな「オールタイム・ベスト」が発売されました。それは3枚組ですから、ちょっと全部聴くのはしんどいな、とは思いましたが、結局全39曲は届いたその日に聴き終わっていましたね。
蛇足でしょうが念のため、Superfly(スーパーフライ)というのは、元々はユニットの名前だった、という知識も付け加えておきましょうか。2007年にメジャーデビューした時点では、メンバーはヴォーカルの越智志帆とギターの多保孝一の、共に愛媛県今治市出身者の2人でした。今回のベストアルバムは、「デビュー10周年」を記念してのものです。その後田保はユニットを脱退、Superflyは越智一人のソロ・ユニットとなります。田保は、アーティストではなく、コンポーザー/アレンジャーとしてSuperflyに関わる、という体制に、その時変わっていました。さらに、プロデューサーとして蔦屋好位置(変換ミスではありません)も深く関わっています。
ですから、殆どの曲のクレジットは作詞/越智志帆、作曲/多保孝一、編曲/蔦屋好位置となっていますし、蔦屋はキーボード奏者として録音メンバーに加わっています。
このベストはCD3枚組、なんでも、曲の選択にはファンからの人気投票が反映されているのだそうです。それらを、「LOVE」、「PEACE」、「FIRE」という3つのカテゴリーに分類して、それぞれ13曲が1枚のCDに収録されています。中には、そのカテゴリーではちょっと無理があるだろう、という曲もありますが、彼女の音楽には須くこの3つの属性が含まれていて、その表出の多寡がこの分類となったのだと思えば、それは全く気にならなくなります。彼女の歌からは、常に「愛」と「幸せ」と「情熱」が聴こえてくるのですから。
ブラスやストリングスが加わった分厚いサウンドでギンギンに迫るものから、彼女が作曲まで手掛けてピアノの弾き語りだけでシンプルに歌い上げるものまで、それこそ彼女が好きだというジャニス・ジョプリンからキャロル・キングへのリスペクトを、極上の声で味わうことができる素晴らしいアルバムです。金曜日の黄昏時には、お似合い(それは「スーパーフライデー」)。

CD Artwork © Warner Music Japan Inc.

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by jurassic_oyaji | 2017-05-04 20:20 | ポップス | Comments(0)
phase 4 stereo spectacular/nice 'n' easy
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Various Artists
DECCA/483 0525


以前こちらでご紹介したDECCAの「フェイズ4」ボックスの続編です。こちらはクラシックではなく、タイトルにあるような「イージー・リスニング」系のミュージシャンのアルバムが集められています。この、当時は画期的といわれていた録音方式によるレコードは、そもそもはこういうジャンルのために開発されたものですから、こちらの方が「先」にあったのですが、なぜかクラシックより「後」に出ることになりました。
今となってはごく当たり前のマルチトラックによるレコーディングですから、正直、録音面からは、今これをわざわざ聴くという価値はほとんど見出せません。それでも、当時は確かに輝いていたアイテムが、全部でアルバム50枚分も、当時の価格の1/10以下の値段で手に入るのですから、これはそそられます。
登場するアーティストは、ロニー・アルドリッチ、スタンリー・ブラック、フランク・チャックスフィールド、テッド・ヒース、マントヴァ―ニ、エリック・ロジャース、エドムンド・ロス、ローランド・ショーといった面々です。かつては一世を風靡した人たちばかりですが、今ではすっかり忘れ去られているのではないでしょうか。
最後のローランド・ショーは、フランク・チャックスフィールドの「引き潮」などが入ったアルバムでのアレンジャーを務めていた人ですね。その、1964年にリリースされた「Beyond the Sea」というアルバムは、1965年の「The New Limelight」というアルバムとで「2 on1」の1枚のCDに収まっているのですが、ジャケットはダブル仕様で両方のものが印刷されているといううれしい扱いです。ただ、このCDでは、ブックレットのトラック表示が、それぞれ別のアルバムのものに入れ替わってるという痛恨のミスプリントが。
このように、収録時間の短いもの20枚が、そういうダブルジャケットに入って10枚のCDになっているほかは、全て表裏オリジナルジャケット仕様の紙ジャケに1枚ずつ入っています。
録音されたのは1961年から1975年まで、クレジットを見るとプロデューサーはトニー・ダマト、エンジニアはほとんどアーサー・バニスターとアーサー・リリーという二人が担当しているのが分かります。実は、この人たちはクラシック編でもほとんどのアルバムの制作を担当しているのですよ。ストコフスキーの「シェエラザード」もトニー・ダマトとアーサー・リリーが担当していますから、あんな音になっていたのは納得です。今回のボックスでの弦楽器のわざと歪ませたのではないかというほどのザラザラした音は、ジャンルを問わずに彼らのポリシーとなっていたのですね。
ですから、この中ではあまりストリングスが活躍していないエドムンド・ロスあたりが、サウンド的にはとても気に入りました。この人はバンドマスターだけではなく、歌も歌っていたのですね。ゲストにカテリーナ・ヴァレンテを迎えたアルバム「Nothing But Aces」などは最高です。
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フランク・チャックスフィールドのビートルズ・アルバムでは、ジャケットが素敵ですね。録音されたのは1970年1月、前年の9月末にリリースされたばかりの「Abbey Road」からのナンバーがすでにカバーされています。
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DECCAの看板スターだったマントヴァーニは、ここには1枚しか入っていません。どうやら、彼がDECCAに残した膨大なカタログの中で「フェイズ4」で録音されたものは、この「キスメット」というミュージカル・アルバムしかなかったようですね。
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1953年にブロードウェイで初演され、1954年には映画版も作られたというこのミュージカルは、アラビアあたりを舞台に全編ボロディンの作品の素材を使って作られたものです。この中で歌われる有名な「Stranger in Paradise」というナンバーは、「ダッタン人の踊り」がそのまま使われている曲だったんですよ。それを全曲、こんなところで聴くことが出来るなんて。ここでは、ジョン・カルショーとは別のアプローチで「ステージ」を再現させている試みが見られます。

CD Artwork © Decca Music Group Limited

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by jurassic_oyaji | 2017-03-16 21:04 | ポップス | Comments(0)