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TODD/Passion Music, Jazz Missa Brevis
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Shaneeka Simon(Voc)
John Turville(Pf)
Will Todd/
St Martin's Voices
The Will Todd Ensemble
SIGNUM/SIGCD563



ウィル・トッドという、初めて名前を聞く作曲家の宗教曲が集められたアルバムです。黒柳徹子ではありません(それは「トットちゃん」)。その作品のタイトルに「Jazz」という言葉が入っていたので、ちょっと興味がそそられて聴いてみることにしました。
この作曲家は1970年にイギリスで生まれています。小さい頃は教会の聖歌隊で歌っていたようですね。現在では作曲家であるのと同時に、ジャズ・ピアニストとしても活躍しているそうです。このアルバムのタイトルとなっている2つの作品も、「ジャズ」のイディオムが満載になっています。
まず、2018年に出来たばかりの「Passion Music」です。これは、「セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ」というロンドンの教会からの委嘱で作られました。この名前を聞いて、半世紀以上前にネヴィル・マリナーによって設立され、DECCAからおびただしい数のアルバムをリリースしていた合奏団を思い浮かべる人も多いことでしょうね。今では直接の関係はなくなったようですが、そもそもはこの教会の合奏団だったことから、このような名前が付けられていました。
この教会は、現在でも音楽には深くかかわっていて、合唱団もグレードの異なったいくつかの団体が存在しています。ここで演奏している「セント・マーティン・ヴォイセズ」というのは、その中でも最高のランクの合唱団とされていて、プロフェッショナルな歌手が集まって作られています。
この曲は「受難曲」と訳されるべき作品なのでしょうが、その中身はいわゆる「受難曲」とはかなり異なっています。テキストも、もちろん聖書の中の言葉は使われていますが、それだけではなくもっと幅広いジャンルからのものも使われています。
そして、音楽も伝統的な「受難曲」とは全く異なっています。なんと言っても、ここで主役を務めている女声のソロ・ヴォーカルは、もろ「ゴスペル・シンガー」なのですからね。そして、伴奏はジャズのピアノ・トリオにホーンが3本加わったというアンサンブルです。
録音のやり方もクラシックとはだいぶ違ったもので、あらかじめアンサンブルとゴスペル・シンガーのパートは録音スタジオで録音してあって、合唱はそれをヘッドフォンで聴きながら教会のアコースティックスの中で録音する、というオーバーダビングが行われています。
そうなると、ここでのコーラスはもはや主役ではなく、単なる「バックコーラス」のような役目しか果たしていないように思われてしまいます。曲の作り方も、そんなに手の込んだものではなく、歌い方も一本調子、なんか、合唱がかわいそうになってくるような曲です。
後半には、有名になった「私のお墓の前で泣かないでください」のテキストや、黒人霊歌の「Were You There When They Crucified My Lord?」をそのまま使った曲なども入っています。まあ、ジャンルの壁を越えた作品といえば聞こえはいいのでしょうが、なんか、どっちつかずの仕上がりという感は免れません。
それに比べると、ラテン語のテキストをそのまま使った「Jazz Missa Brevis」(ここには、ソロ・シンガーは登場しません)の方が、数段まとまりのある作品です。それこそ、ボブ・チルコットやジョン・ラッターの作品のような、上手にジャズとコーラスを合体させた成果が感じられます。
ただ、そのような、ジャズマンとの共同で演奏されている時の合唱は、なんとも主体性を欠いた表現に終始しているのが、とても気になりました。
というのも、この2曲の大作のほかに、トッドが作ったあまりジャズっぽくない、ア・カペラで歌われる小さな曲が4曲ここには収められているのですが、そこで聴かれるこの合唱団が女声はノンビブラートの伸びやかな声ですし、男声は多少ハスキー気味の、それでいて完璧なハーモニー感を持った人たちばかりですから、とてもなめらかでピュアなサウンドが楽しめるのですよ。それを聴くと、2つの大曲では、なんかとてももったいないことをやっていると思えて仕方がありません。

CD Artwork © Signum Records

by jurassic_oyaji | 2019-03-09 23:32 | 合唱 | Comments(0)