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MOZART/Messe c-Moll
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Christina Landshamer(Sop), Anke Vondunk(MS)
Steve Davislim(Ten), Tobias Berndt(Bar)
Howard Arman/
Chor des Bayerischen Rundfunks
Akademie für Alte Musik Berlin
BR/900917


モーツァルトの「ハ短調ミサ」の最新録音、使われている楽譜が2018年にBreitkopf und Härtelから出版されたばかりのクレメンス・ケンメというオランダの音楽学者による修復稿です。
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この名前を聞いてこちらの記事を思い浮かべる方は、かなりの通。ここでご紹介したダイクストラの演奏(SONY)でも、やはり「ケンメ版」が使われていました。その時のケンメ自身のライナーノーツによれば、この楽譜は2006年のモーツァルト・イヤーにオランダ・バッハ協会とフランス・ブリュッヘンのために作られたもので、その年の4月にブリュッヘン指揮の18世紀オーケストラとオランダ室内合唱団によって「初演」されています。
それは多くの指揮者によって取り上げられることになり、2012年には、このダイクストラとバイエルン放送合唱団の演奏が録音されて、CDになりました。その時には、ケンメによって最新の研究成果が織り込まれたとされる新しい「2012年版」が使われていました。
そして今回2018年に、2016年からダイクストラの後任としてこの合唱団の芸術監督に就任したハワード・アーマンの指揮で録音されたのが、このCDです。ここには、「2018年の修復稿」というクレジットがありました。
実は、その「2018年版」は、出版社のサイトで現物を見ることが出来ます。この修復稿は、基本的にモーツァルト自身が作っていたものの欠損部分を追加したという新全集版と同じポリシーによって作られたようです。それを、「2012年版」を使って演奏されたとされる先ほどのダイクストラ盤と比べてみると、全然違うのですよ。具体的には、「Sanctus」で、「2018年版」の楽譜では合唱は8小節目から入っているのに、ダイクストラのCDでは7小節目から入っています。さらに、「Credo」では、全集版のエーダーの補筆にはないトランペットとティンパニが頭から入っているのは楽譜と同じなのですが、そのリズムがCDでは全く異なっていて、同じような編成をとっているレヴィン版やベルニウス/ヴォルフ版と同じリズム(弦楽器のリズム)になっています。ですから、同じ「ケンメ版」とは言っても「2012年版」と、現実に出版されているので、決定稿と思われる「2018年版」とは、かなり異なったものなのでしょう。もちろん、その「2012年版」にしても、最初の「2006年版」とは異なっていたのでしょうね。なんか、そんなに頻繁に改訂を行っていいものなのか、と、不安になってしまいます。
しかも、今回のアーマンの録音ではその楽譜とも全く違う演奏が行われているのですよ。「Sanctus」では確かに楽譜通りですが、「Credo」では、合唱が入るまではトランペットとティンパニは入らず、合唱が始まってからそれらが入るという形になっています。しかも、そのリズムは先ほどのダイクストラ盤と同じリズムなのです。
これについては、やはりこちらのCDでもライナーノーツを執筆しているケンメは、「作曲家でもあるアーマンのアイディアを取り入れた」と言っていますね。いやいや、ここまで出版楽譜と違うことをやっているのでは、もはや「ケンメ版」とは言えず、「ケンメ/アーマン版」になってしまうのではないでしょうか。しょっちゅう改変は行うわ、演奏者の意見にそのまま従うわ、このケンメという人に学者としてのプライドはないのでしょうか。
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これがケンメの写真、けっしてイケメンではありません。
ちなみに、ケンメは2009年に「レクイエム」の修復稿も完成させているようで、まだ出版はされてはいませんがこちらで音だけは聴くことができます。既存の修復版のいいとこ取りという感じで、「Hosanna」がレヴィン版並みに拡大されているほかは、ジュスマイヤー版と同じ尺です。でも、これが決定稿だとは言い切れないのが悲しいところです。
ダイクストラとの録音ではモダン楽器のオケでしたが、今回はピリオド・オケ、きっちりと引き締まったいい演奏です。そこに、ソプラノのランツハーマーとメゾのフォンドゥンクが華を添えています。

CD Artwork © BRmedia Service GmbH

by jurassic_oyaji | 2019-02-09 20:50 | 合唱 | Comments(0)