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Les 4 Saisons
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Swingle Singers
VOCALION/CDLK 4606(hybrid SACD)



旧聞に属しますが、2015年1月19日に、「スウィングル・シンガーズ」の創設者ウォード・スウィングルが亡くなりました。半世紀ほど前には一世を風靡していたコーラス・グループのリーダーでしたが、もはやその知名度はほとんどなくなっていたのでしょう、彼に対しての特別な追悼アクションが起こったという話は聞くことはありませんでした。
彼がパリでこの8人編成のコーラス・グループを作ったのは1962年のことでした。彼自身はテナーのメンバーでしたが、その編曲を一手に引き受けています。翌年にバッハの曲をベースとドラムスをバックにジャズ風にスキャットで歌うというアルバムを出したところスカッと大ヒット、一躍世界中にその名を知られる存在となりました。
そのファーストアルバムはPHILIPSからリリースされました。パリ時代のグループは、全部で13枚のアルバムを残していますが、そのうちの11枚がPHILIPSのものです。その中で、1972年にリリースされた最後のアルバム「Les Quatre Saisons」(英語圏でのタイトルは「The Joy of Singing」)が、なんとDUTTON/VOCALIONからマルチトラックSACDとなってリリースされました。
このアルバム、フランスでは普通のステレオLPで出ただけですが、当時のPHILIPSの日本での窓口だった日本ビクターから、「CD-4」という方式でカッティングされた4チャンネルLPが出ていたのですね。これは、親会社のビクターが開発した独自の方式で、SONYあたりが推進していた「SQ」のような「マトリックス方式」ではなく、1本の溝に4チャンネル分の信号をすべてカットするという「ディスクリート方式」でした。その原理は、可聴帯域にはフロントとリアの和信号、それよりも高い周波数(15kHzから50kHz)では差信号をFM変調したものを収録し、それを出力時に加算と減算を行って独立した信号を取り出すというものです。
これは、普通の2チャンネルで再生しても、それぞれのチャンネルはフロントとリアがミックスされた信号になるので、何の問題もないという利点もありました。ただ、そのためには50kHzまでの信号に対応できる周波数特性を持つ特別なカートリッジが必要でした。
もちろん、現代のSACDのマルチトラックでは、そんな大層な技術がなくても4つのチャンネルはきれいに分離されて完璧なサラウンドを楽しむことができます。
どうやら、スウィングル・シンガーズのアルバムで4チャンネルで録音されたものはこの1点だけだったようですね。この後スウィングルはロンドンで別のメンバーを集めて「スウィングルII」というグループを結成します。その時のレーベルがやはり4チャンネルには積極的だったCBSだったので、もしやと期待したのですが、そこでは2チャンネステレオの録音しか行っていなかったようですね。
というのも、このSACDのシリーズはほとんどが「2 on 1」でアルバム2枚分が収録されているのですが、ここでは1枚分、たったの30分しか入っていないのですよ。なんとももったいない話ですね。もしも、ロンドンでの第1作「Madrigals」(1974年)が4チャンネルで録音されていたら、めでたくレーベルを超えた「2 on 1」が出来ていたはずなのに。
このアルバムは、タイトル通りヴィヴァルディの「四季」から「春」が全楽章演奏されています。そのほかにもパッヘルベルの「カノン」やバッハのコンチェルトなどと、モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲までが「ダバダバ」で歌われています。サラウンドの定位は、フロントがソプラノ(左)とアルト(右)、リアがテナー(左)とバス(右)ときっちり四方に分離していて、それらに囲まれてベースとドラムスが入っています。
このような完全に分離された定位で聴くと、男声のパートがはっきり聴こえてきて、なかなか粋なアレンジが施されていることがよく分かります。それに乗って、クリスティアンヌ・ルグラン(つい最近亡くなったミシェル・ルグランの姉、彼女も2011年に亡くなっています)の卓越したソルフェージュのヴィヴァルディのソロが冴えわたります。

SACD Artwork © Vocalion Limited.

by jurassic_oyaji | 2019-03-19 07:31 | 合唱 | Comments(0)