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BERLIOZ/Symphonie Fantastique
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Jean-François Heisser, Marie-Josèphe Jude(piano vis-à-vis)
HARMONIA MUNDI/HMM 902503



ベルリオーズの没後150年でもなければ出ないような珍盤です。あの「幻想交響曲」をピアノ用に編曲したものを演奏しています。まあ、古くはリストあたりが作ったソロピアノ・バージョンがありましたが、今回は2台ピアノのための編曲、それを「1台」のピアノで演奏しているというのが最大の特徴です。
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これがそのピアノ。1928年に作られたプレイエルの「piano vis-à-vis(向い合せピアノ)」です。2台のグランドピアノを向い合せに合体すれば、こんな長方形に収まってしまうのでしょう。これだったら、ピアノ・デュオの演奏家の需要がありそうな気がしますが、なんでも70台ほど製造されただけで、もはや生産はされていないのだそうです。この楽器は、録音が行われたパリのフィルハーモニーの楽器博物館に保存されていたものなのだとか。
今回使われた楽譜は、ここで演奏しているピアニスト、ジャン=フランソワ・エッセールが30年ほど前から手掛けていたものだそうです。複雑に入り組んだベルリオーズのスコアをピアノで再現するには、やはり一人では限界があるでしょうし、二人で分担するにしても連弾では音域も限られてしまいますから、2台ピアノというスペックには期待できます。
実際に聴いてみると、まず「1台」の楽器ではあっても、アクションの位置は左右に離れていますから、定位はしっかりその位置になっていて、それぞれの奏者の分担ははっきり聴き分けることができます。そうなると、オーケストラでは隠れてしまってほとんど聴こえないようなパートのフレーズもしっかり聴こえてくるので、色々新しい発見もありました。ただ、やはりオーケストラとしてのサウンドはすっかり染みついているので、別にそのようなものが聴こえても、それがこの作品に対する価値を高めるものではないような気もします。
逆に、オーケストラでは弦楽器が弓の木の部分で演奏(コル・レーニョ)したり、駒のそばで演奏(スル・ポンティチェロ)するような指定があって、そこではとても効果的なサウンドが実現できることになっているのですが、残念なことにピアノではそのような効果を出すことは絶対にできません。本当にやりたければ、もう1台「プリペア」された楽器が必要になってくるでしょうね。
ただ、第5楽章でその「コル・レーニョ」をバックに管楽器がこんな難しいことをやっているような場面では、ピアノはその機能性を発揮できるはずです。
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これはフルートのパート譜ですが、そこに指定されているトリルは、長い音符では可能ですが、赤丸のような八分音符に付いたものは、まず楽譜通りに演奏することはできません。でも、ピアノだったら難なく弾けてしまう・・・と思っていたのですが、今回のCDではその八分音符の上のトリルが見事になくなっているのですよ。そんなに難しかったんですね。フルートで演奏できないのは当たり前でした。
実は、リスト版でもここはトリルではなく前打音でごまかされていましたね。
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ただ、さっきのリンクの演奏では、ここはその部分だけではなく、このパッセージの中の全てのトリルが省略されていましたけどね。
もう一つ、今回のCDで気になったのが、同じ第5楽章の「鐘」の音です。ここではベルリオーズはしっかりCとGの音を指定していて、今ではオーケストラで演奏するときにはそのピッチの鐘を使うことが当たり前になっています。さらに、作曲家は「不正確なピッチの鐘しかない時は、ピアノで演奏した方がよい」とまで言っています。それを、ここでは半音を重ねて、わざわざ「不正確」な音で演奏しているのですね。これは全く理解不能です。
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さらに、この二人のアンサンブルにもかなり問題があります。アインザッツが合わないところがかなりあるのですね。しかも、第1楽章の最後の「アーメン終止」(↑のreligiosamente以降)のように、絶対に合わせてほしいところでも全然合ってないのですから、どうしようもありません。

CD Artwork © harmonia mundi musique s.a.s.

by jurassic_oyaji | 2019-03-02 20:16 | ピアノ | Comments(0)
BERLIOZ/Harold en Italie, Les Nuits d'été
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Tabea Zimmermann(Va), Stéphane Degout(Bar)
François-Xavier Roth/
Les Siècles
HARMONIA MUNDI/HMM 902634


このレーベルのCDにはこんなシールが貼られていました。どうやら今年は、ベルリオーズ・イヤーだったみたいですね。亡くなったのが1869年ですから、「没後150年」ということになるのでしょう。いやあ、気づきませんでした。
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ただ、いまいち盛り上がりに欠けるように感じられるのは、なぜなのでしょう。ベートーヴェンなどは、来年の「生誕250年」に向けてもう今から大騒ぎが始まっているというのに。
まあ、ベートーヴェンだったらまずは記念に交響曲全集を作ったりするのでしょうね。でも、ベルリオーズの場合は確かに「交響曲」と名付けられた作品は4曲ほど作っていますが、今のところそれらをまとめて「全集」を作った人はいないのではないでしょうか。実際は、ベルリオーズのほぼすべてのオーケストラ作品を録音したコリン・デイヴィスとシャルル・デュトワは、「交響曲」を全曲録音はしていますが、それだけをまとめた全集を作ってはいないはずです。
というのも、ベルリオーズの場合の「交響曲」はそれぞれに個性的で、編成も異なっていますから、それらをまとめるという発想があまり湧いてこないのでしょうね。なんせ、最初に作られたのはあの「幻想交響曲」ですから、スタート時からそれまでの交響曲とはかけ離れた、規格はずれのぶっ飛んだものでした。次の交響曲が今回の「イタリアのハロルド」となるのですが、これにはヴィオラのソロが加わるので、形としては「協奏曲」ですしね。さらに3番目の交響曲では「劇的交響曲」というタイトルで、最初と最後の楽章はソリストと合唱が加わった大規模な「オラトリオ」になってしまいます。そして、最後の交響曲は「葬送と勝利の大交響曲」という、知る人ぞ知るレアな曲、基本的にブラスバンドによって屋外で演奏される作品です。オプションで弦楽器を加えることもありますが、やはり普通のオーケストラが演奏するには敷居が高いでしょうね。つまり、こんなヘンな曲が混ざっているので、なかなか「全集」は作れないのですよ。
とりあえず、「幻想」にははるかに及ばないまでも、この「ハロルド」もオーケストラの通常のレパートリーには入っています。その4つある楽章の中で、第3楽章の「アブルッチの山人が、その愛人によせるセレナード」だけは、かつてNHK-FMで放送されていた「トスカニーニ・アワー」という番組で一時期テーマ曲として使われていましたから、曲名が分からなくてもこのメロディが記憶に残っている人はたくさんいるのではないでしょうか。これを聴くと、そのときのMC村田武雄さんの声まで思い出してしまうのでは。
今回のロトとレ・シエクルによる新録音では、当然ピリオド楽器が使われています。その弦楽器が、ノンビブラートで第1楽章の序奏を演奏し始めたときには、なにか今まで聴いたことのないようなおどろおどろしい情感が伝わってきました。しばらくしてツィンマーマンのヴィオラ・ソロが入ってくると、それも極力ビブラートを抑えたストイックな響きが、なんとも印象的に感じられます。それが、「quasi niente(音がないかのように)」という、「幻想交響曲」にも登場するとんでもない指示の部分では、本当に無音一歩手前といったとても緊張感のあふれる演奏を聴かせてくれます。
第2楽章の「夕べの祈祷を歌う巡礼の行列」では、「Canto religioso(宗教的な歌)」という部分でソリストはスル・ポンティチェロ(駒のそばで弾く奏法)でアルペジオを弾き続けるのですが、それがあまりにピュアな音色だったので、最初はオンド・マルトノのような電子楽器でも使っているのかと思ってしまったほどです。そもそも、そのバックに流れる木管楽器の透き通ったハーモニーが、まるで電子音のように聴こえていましたからね。
そんな感じで、もうびっくりするような音色のオンパレードの中、とてもきびきびとした物語が進んでいくのでした。

CD Artwork © harumonia mundi musique s.a.s.

by jurassic_oyaji | 2019-02-21 21:10 | オーケストラ | Comments(0)