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おやぢの部屋2
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ベートーヴェンの交響曲は、何種類もの楽譜があります
 きのうの「おやぢ」では、ペータース版を取り上げていました。あそこでは「第9」がネタになっていたのですが、実はもう一品用意してありました。つまり、あれだけではさすがに寂しかったので、もう少し盛り上げようとしていたのですが、結局そこまでしなくても規定の字数が埋まってしまったので、その「もう一品」はボツになってしまいました。となると、他で使い道はないので、ここでそれを紹介させていただくことにしましょう。
 それは、「田園」についてのネタです。ニューフィルでは今までに2回この曲を演奏していますが、一番最近のものが1997年4月の第27回定期演奏会でした。もう20年以上前のことですね(つまり、ニューフィルでは20年以上この曲を演奏していません)。その時の指揮者が、やはり20年以上前の下野竜也さんでした。そのころから挑戦的なことが好きだった下野さんは、その時にペータース版のスコアを使って指揮をしていたのですよ。ただ、パート譜は昔の旧ブライトコプフ版でしたから、適宜スコアに従って直して弾いていました。ですから、今では第2楽章の弦楽器に弱音器を付けて演奏するのは当たり前になっていますが、当時はみんな戸惑っていましたね。
 ただ、その楽章にはもう1個所、そういう奏法や表現面のことではなく、音そのものが旧ブライトコプフ版とは違っているところがありました。それは、83小節目の後半です。

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↑旧ブライトコプフ
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↑ペータース(新ブライトコプフ)

 ご覧のように、ヴィオラ、クラリネット、ホルンの赤丸で囲んだ実音E♭がEナチュラルに変わっているのですよ(次の小節は、どちらもE♭)。ですから、ハーモニーも「短調→短七」だったものが「長調→属七」になっています。これは、例えばクラリネットの音を聴いていればはっきり聴き分けられます。
 でも、下野さんはここは直さないで、旧ブライトコプフのままの音で演奏させていたことが、この時のCDを聴いて確認できました。ですから、ここをもしペータース版通りに演奏していたら、その録音は「世界で初めてペータース版を使って演奏されたCD」だったマズアとゲヴァントハウスのものに次ぐものになっていたのですけどね。惜しいことをしました。
 このころは、あの「ベーレンライター版」が華々しくデビューをしていました。ところが、ベーレンライター版を校訂したジョナサン・デル・マーは、この楽章の弦楽器には弱音器を付ける指定は加えましたが、この83小節目の部分には手を付けなかったのです。その代わり、ペータース版では何も変化がなかった「第9」での終楽章、マーチの後のオーケストラだけの部分が終わって、再び合唱が始まる直前のホルンのリズムを、とても不規則な形で提案していましたね。
 「おやぢ」にも書いたように、今ではペータース版は絶版になっていますが、それはほとんど同じ形で新ブライトコプフ版に引き継がれています。これは、ペータース版で校訂を行っていた2人のうちの一人、ペーター・ハウシルトが、新ブライトコプフ版の校訂も「田園」を含めて6曲行っていたためです。残りのもう一人のペーター・ギュルケの仕事も、おそらくクライヴ・ブラウンという人が、かなり忠実に再現しているのではないでしょうか(例えば、「5番」の第3楽章の繰り返し)。
 この新ブライトコプフ版も、今ではベーレンライター版と並んでオーケストラの標準的なライブラリーになりつつありますから(篠崎さんも、ベーレンライターよりブライトコプフの方を支持しているようですね)、そのうち、この第2楽章の「長調」になった録音が広く出回るようになるのではないでしょうか。とりあえず、私が持っているCDでは、こちらがそうでした。
by jurassic_oyaji | 2019-02-15 23:01 | 禁断 | Comments(0)