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BEETHOVEN/Symphony No.9"Choral"
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Anna Tomowa-Sintow(Sop), Annelis Burmeister(MS)
Peter Schreier(Ten), Theo Adam(Bas)
Kurt Masur/
Radio Chorus Leipzig
Gewandhausorchester Leipzig
PENTATONE/PTC 5186 146(hybrid SACD)



1970年代の「4チャンネル」音源を、SACDやBD-Aによって現代に蘇らせるというプロジェクトの先駆者PENTATONEレーベルの初期のリリース分にクルト・マズア指揮のライプツイヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のベートーヴェン全集が含まれていることを最近知りました。それはまだ廃盤にもならず購入できるようになっていたので、とりあえず「サラウンド映え」しそうな「第9」だけでも聴いてみることにしました。
マズアのベートーヴェンと言えば、個人的には「ペータース版による初めて全曲録音」というイメージがあります。かつては世界中のオーケストラが間違いだらけの旧全集版(ブライトコプフ&ヘルテル)を何の疑いもなく使っていました。そんなことではいけないということで、当時は東ドイツの国有会社だったライプツィヒの楽譜出版社ペータースでは、1977年のベートーヴェン没後150年にあわせてペーター・ギュルケとペーター・ハウシルトの校訂による、世界で初めてのまっとうなクリティカル・エディションを刊行したのです。それは、「西側」に対して「東側」の威信を誇示するかのような、まさに「国家事業」と言えるほどのものだったのです。ですから、後にその楽譜を使った全曲録音が、東ドイツのオーケストラ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とマズアによってまずは行われました。録音はもちろん東ドイツの国営企業DEUTSCHE SCHALLPLATTENのスタッフが担当し、PHILIPSレーベルによって全世界で販売されることになります。
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ただ、届いた商品でソリストの名前を見ると、ペーター・シュライアーとかテオ・アダムといった、かなり昔懐かしいものだったので、ちょっと違和感はありました。それでも、確かに木管の奥行きや、さらにその後ろに定位しているティンパニの音場などは、くっきりと浮かび上がってくる、紛れもない「4チャンネル」の音でした。ただ、前に聴いていたCDの音は、もっと生々しい感じがしていたような気がします。
そこで、CDの方を聴いてみると、確かにこちらの方が弦楽器などはクリアに聴こえますし、何よりもティンパニの存在感がとても大きくなっていました。ということは、4チャンネルを2チャンネルにするときに、楽器のバランスが変わってしまっていたのでしょうか。ただ、コントラバスの低域が、CDの方が明らかに伸びているのが不思議です。もしやと思って、リアスピーカーの位相を変えてみたのですが、それでも低音は変わりません。
それで、よくよくSACDとCDを比べてみたら、録音時期が全然違っていました。ソリストも別な人です。マズアは、同じオーケストラで2回ベートーヴェンのツィクルスを完成させていたんですね。うっかりしていました。このSACDは1974年の録音だったのですよ。まだペータース版は出来ていません。CDは1990年と1991年、もうこのころは「4チャンネル」なんかはなくなっていましたね。なんといううっかりミス。
まあ、仕方がありません。全盛期のシュライアーやアダムの歌を楽しむことにしましょうか。それは、今聴くととても個性的なことが分かります。オーケストラもなんだかあちこちでのどかな音を奏でていましたね。
それが、第4楽章のマーチの直前、「vor Gott!」のフェルマータで、オーケストラ全員がディミヌエンドをかけているのには、驚きました。最後には、合唱だけがア・カペラで残っているのですよね。これは、まさしくペータース版の先取りではありませんか。このころ使われていたはずの出版譜ではティンパニのパートだけがディミヌエンドでしたから、これは指揮者の裁量なのでしょう。
もしかしたら、「9番」の校訂を担当したハウシルトは、このマズアの演奏を聴いて、資料によってまちまちなこの部分に、オーケストラ全体のディミヌエンドを入れたのかもしれませんね(現在ではこのペータース版は東西ドイツ統合により絶版になっていますが、ハウシルトの校訂はそのままブライトコプフ&ヘルテルの新全集で再現されています)。

SACD Artwork © PentaTone Music b.v.

by jurassic_oyaji | 2019-02-14 23:23 | オーケストラ | Comments(0)