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タグ:マニフィカト ( 1 ) タグの人気記事
BACH/Magnificat, HELMSCHROTT/Lumen
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S. Thornhill, M.Graczyk, S. Körber, A.Karmasin(Sop)
T.Holzhauser, F.Losseau(Alt), Markus Schäfer, Robert Seiller(Ten)
Andreas Matterberger, Kiklas Mallmann(Bas)
Theona Gubba-Chkheldze(Vn), Robert Helmschrott(Pf)
Franz Hauk/Simon Mayr Chorus, Concerto de Bassus
NAXOS/8.579049



バッハの「マニフィカト」の新しい録音だと思って聴いてみたら、それはバロックと現代の音楽を、同じミュージシャンたちが同じ時期に同じ会場で録音していたという驚くべきアルバムでした。
まずバッハの方は、最近はめっきり少なくなってきた、「1パート2人」という少人数の合唱で、その人たちがソロも歌うという形の演奏です。もちろん、オーケストラはピリオド楽器を使った「コンチェルト・デ・バッスス」という団体です。この名前は、バロック音楽の基本が低音(Bassus)だということで付けられたそうですから、バロック時代の作品を主に演奏しているのでしょう。
それは、早めのテンポでとても生きのいい演奏でした。アリアでは、ソリストたちはこの曲ではあまり聴いたことのない、大幅に装飾を加えた歌い方で、「バロック」を演出してくれています。
ただ、その人たちが合唱パートを歌う時になると、なにかソリストとしてのクセが出てきてしまって、ちょっと居心地が悪く感じられてしまいます。例えば、細かいメリスマなどを、あまり正確には歌わずに適当に切り上げてしまう、といったような歌い方ですね。
そして、2017年に作られた、ロベルト・マクシミリアン・ヘルムシュロットというドイツの作曲家の新作「ルーメン」が続きます。ブックレットにはこの1938年生まれの重鎮作曲家自身が執筆したコメントが掲載されていますが、どこから委嘱されたものなのかということには全く触れられていません。まあ、裏ジャケットには2017年の宗教改革500年のロゴなどが入っていますから、そのあたりの関係者からの委嘱なのでしょう。
ただ、ここでは、そんなキリスト教がらみのテキストだけではなく、ユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教という3つの宗教のコラボレーションという形を取っています。さらにそこには、ゲーテなどの詩人によるテキストも加わります。作品全体は「過去」、「現在」、「やがて来る時」という3つの部分からできていて、全てを演奏するには40分以上かかるという大作に仕上がっています。
ここで、オーケストラのメンバーはモダン楽器に持ち替え、現代のフルオーケストラの編成に拡大されます。特に、そこでは打楽器が広範にフィーチャーされて、とても派手なサウンドが繰り広げられています。
一応、「マニフィカト」に出演していたソリストたちによるソロのほかに、ここではちゃんとした合唱も加わります。それは、「ジモン・マイール合唱団」という団体で、彼らが自分たちの名前にした作曲家の作品を演奏したCDで一度聴いたことがありました。ここで指揮をしている、この合唱団の創設者のフランツ・ハウクが、今回のCDでも指揮をしています。
音楽は、とてもリズミカルな、まるで異教徒の踊りを思わせるような派手なオープニングで始まりました。そのあとには、オーケストラの全ての楽器が全く別の動きをするという混沌のシーンが何度も現れます。
このオーケストラの創設者の一人であるコンサートマスター、ジョージア生まれのテオナ・グッバ=チケルトは、モダンヴァイオリンとバロックヴァイオリンの双方の奏法をきちんと学んできた方です。彼女は、何度も出てくるとても技巧的なソロを、いとも楽々と演奏していました。
そんな中で、ソリストや合唱は、時にはヘブライ語で歌われるユダヤの旋法や、もろオリエンタルなテイスト、あるいはシュプレッヒ・ゲザンクといった様々なイディオムを交えての熱演。最後にはヘブライ語の聖歌が、まるでロシア民謡のようなメロディーラインをもって登場し、この「オラトリオ」の締めとなっています。
そこに、作曲家自身のピアノによる、まるでメシアンのような和声のソロがしばらく続き、終わりを迎えます。先ほどのコメントで作曲家が熱く語っていた3つの宗教の隔たりを超える試みは、これで完結していたのでしょうか。

CD Artwork © Naxos Rights(Europe) Ltd

by jurassic_oyaji | 2019-04-02 23:14 | 合唱 | Comments(0)