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W.F.BACH/Six Duos for Two Flutes
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Patrick Gallois, 瀬尾和紀(Fl)
NAXOS/8.573768



これまで、大バッハの長男、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの作品には、「F」または「Fk」という作品番号が付けられていました。これは、1913年にマルティン・ファルクという人が出版したW.F.バッハの生涯と作品に関する著作「Wilhelm Friedemann Bach/Sein Leben und seine Werke mit thematischem Verzeichnis seiner Kompositionen und zwei Bildern」の中で制定しているものです。
それによると、このCDで演奏されている「2本のフルートのための6つのデュエット」には、「F54」から「F59」までの6つの番号が与えられています。したがって、これまではそのファルク番号の順に「1番」から「6番」までの番号が付けられていました。したがって、昔のレコードやCDではそのようなナンバリングになっていましたし、2017年に録音された今回の最新のCDですらそうなっています。
しかし、このファルクの番号は作曲年代順にはなっていないふぁるくさい(古臭い)ものですから、最近では時系列に沿った別の番号が付けられた楽譜も出版されています。たとえばCARUSではバッハ一族のすべての作曲家の作品全集を刊行するという壮大なプロジェクトを展開中ですが、フリーデマンの場合はプロジェクトの名前「BR(Bach-Repertorium」の中のW.F.バッハの作品目録ということで、それぞれの作品には新たに「BR-WFB」という略号が頭に付いた番号が付けられています。それとファルク番号を対照させてみると、
  • Sonata I e-Moll : BR-WFB B 1 / Fk 54(旧1番)
  • Sonata II G-Dur : BR-WFB B 2 / Fk 59(旧6番)
  • Sonata III(Duetto) Es-Dur : BR-WFB B 3 / Fk 55(旧2番)
  • Sonata IV(Duetto) F-Dur : BR-WFB B 4 / Fk 57(旧4番)
  • Duetto Es-Dur : BR-WFB B 5 / Fk 56(旧3番)
  • Duetto F-Moll : BR-WFB B 6 / Fk 58(旧5番)
となります。「B」というのは、カテゴリーの記号、ここでは「室内楽」でしょう。その後の数字が、同じ編成の中では作曲年代順になっています。そこで、このCDの演奏順を見てみると、
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何のことはない、しっかりこの順番になっているではありませんか。実は、このCDで使われているゲルハルト・ブラウン校訂のBREITKOPF新版でも、すでに「新しい」番号が使われているのですよ。ですから、この表記は明らかな誤記ということになりますよ。古くからの番号に愛着があったのかもしれませんが、せめて「No.2(No.6)」ぐらいの表記は出来たはずなのに。相変わらずお粗末なNAXOSでした。
先ほどの「新しい」リストを見ると、それぞれの曲のタイトルが2曲ごとにも微妙に違いますね。これは、作られた時期がかなり離れているということの名残なのでしょう。W.F.バッハが生まれたのは1710年ですが、このCDのライナーノーツによると「1番」と「2番」が作られたのはかなり早い時期、1729年ごろ、「3番」と「4番」は1741年以前、そして「5番」と「6番」は晩年のベルリン時代(1774年以降)だということです。ですから、それぞれの時期での作曲技法の差異も認められるはずです。確かに、最初のころは2つの声部が完全に独立したポリフォニーで書かれていますが、後の作品では古典、あるいはロマン派にも通じるような、主旋律と伴奏みたいなパターンが見つかりますね。
ガロワと瀬尾さんという師弟によるデュエットは、全ての曲で1番フルートがガロワ(左)、2番フルートが瀬尾さん(右)というパート分けのようでした。おそらく、楽器は同じエイベルの木管でしょう。それを使って、完全なノン・ビブラートで演奏しているのが、この時代の音楽に対するリスペクトのようです。もちろん、装飾なども特に繰り返しの後などはてんこ盛りなので、ひと時も聴き逃せません。この二人のことですから、アゴーギグもものすごく、時には他のパートとずれてしまうこともあるのですが、それも「芸」のうちだと感じさせられるのは、やはりすごいものです。そこからは、バロックの様式をはるかに超えた感情のほとばしりすら感じられた瞬間が何度あったことでしょう。
「6番」の第2楽章の本当に美しいメロディで、ガロワがついビブラートをかけていたことに気づいた時には、なにか愛おしさのようなものまで感じられてしまいました。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.

by jurassic_oyaji | 2019-01-31 20:40 | フルート | Comments(0)