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FRANCE
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Marcus Creed/
SWR Vokalensemble
SWR/19065CD



マルクス(マーカス)・クリードが指揮をしたSWRヴォーカルアンサンブルの「世界の国」シリーズは、もう何ヵ国リリースされているのでしょうか。最近は、以前の縦に線が入ったデザインから、もっとシンプルなレイアウトのジャケットに変わってきていますね。
今回のテーマは「フランス」です。とは言っても、全てフランス人の作曲家というわけではなく、フランスで活躍しているギリシャ人のジョルジュ・アペルギスという人の作品が入っています。同じようなスタンスで、ほとんど「フランスの作曲家」と認知されている人にあのヤニス・クセナキスがいますが、アペルギスはそのクセナキスの弟子なのだそうです。
それ以外は、ドビュッシーから始まって、プーランク、ミヨー、ジョリヴェ、そしてメシアンと、それぞれの年代を象徴するような名前が並んでいるのはさすがです。とは言っても、これは意図してそのようなカップリングを目指したわけではなく、この合唱団が日常的に行ってきた録音の中からこれだけのものを選んだ、というスタイルのようですね。いつの間にかできていた、という感じ、なんだかうらやましいですね。
実際、ここで演奏されている曲は、2005年から2017年までの長いスパンで録音が行われています。クリードがこの合唱団の芸術監督に就任したのが2003年ですから、彼のこの合唱団とのキャリアとともに、折に触れて録音されていたということになりますね。
そして、この中で最も新しい録音である、プーランクの「Un soir de neige」(2017年録音)と、最も古い2005年に録音された同じプーランクの男声合唱曲「Quatre Petites Prières de Saint François d'Assise」とを比べると、録音状態も、そして作品に対する基本的なアプローチもほとんど変わっていませんから、アルバムとしてのまとまりには何の関係もありません。これは驚くべきことではないでしょうか。
そこで貫かれているのは、おそらく、変に「フランス風」に歌うのではなく、しっかり楽譜通りに歌うことによって、国籍を超えた作曲家の音楽性を的確に表現する、といった姿勢なのではないでしょうか。その結果、ここで聴けることになったのが、鋼のように強固なハーモニーです。彼らは、フランス音楽で多用される非和声音をふんだんに使った房状和音を、極度に磨き上げて常に妥協のない形で提示しています。そこから発散されるものは、なよなよとした「おフランスのエスプリ」ではなく、それぞれの和音の持つ独特の「力」です。
クリードの前任者、ルパート・フーバーの時代、1999年と2000年に録音されたアルバムでは、この合唱団はやはりフランスの作品を歌っていました。
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この中では、ドビュッシーの「シャルル・ドルレアンの3つの歌」と、ジョリヴェの「祝婚歌」が、今回のCDと共通していました。それらを聴き比べてみると、その頃はこのドイツの合唱団のメンバー(どいつなのかは分かりませんが)に何かフランス物に対するコンプレックスがあるように感じられてしまいます。それを克服するために、ことさらに見当違いの表現を多用しているのですね。しかし今回は、そんな「小技」ではなく、先ほどのハーモニー感を武器に、真正面からフランス音楽に取り組んでいるような印象があります。これは間違いなく指揮者の違いから生まれた「進化」なのでしょう。
この中で唯一ご存命(1945年生まれ)のアペルギスの作品は、多くの現代作曲家が素材として使っているスイスのアウトサイダー・アーティスト、アドルフ・ヴェルフリのアートが元になった「ヴェルフリ・カンタータ」の中の楽章として、この合唱団のために作られた「Die Stellung der Zahlen(数の配置)」です。これは、ヴェルフリの作品の中に登場する文字や記号、音符などを、まさにクセナキスのような複雑な手法で音楽に変換したという、とても難解なものです。ここでは、おそらく最も重要なファクターはリズムなのではないかと思われるのですが、この合唱団はそれを見事にクリアしています。

CD Artwork © Naxos Deutschland Musik & Video Vertriebs-GmbH

by jurassic_oyaji | 2019-01-22 22:57 | 合唱 | Comments(0)